#922 お麩のように、優しく。
あなたのお麩のような優しさが好き。
あなたと、京都のお麩のお店。
1階のショップ。
レストランは、2階。
後から入ってきたお客さんが、「レストランで、来たんですけど」と、スタッフの人に声を掛けた。
スタッフの女性は、愛想良く、「こちらでございます」と案内をした。
あなたは。
あなたも、予約をしている。
だけど、いきなり、「レストランを、予約してるんですけど」とは、言わない。
まず、商品を見ながら、お店の人と話をしている。
お店に人の説明を、遮らない。
ひとことひとことに、小さく驚きながら、話しを聞いている。
まるで、宮様が、ご訪問されているような、気品とフレンドリーさが漂う。
「おしゃれに、なりましたね」
と、リニューアルを褒めた。
「前から、お世話になってましたか」
そこで、おもむろに。
「今日は、お食事の予約を取っていただきました」
と、初めて明かす。
いきなりでないところが、余裕を感じる。
お店の人は、商品の説明を一つ一つ聞いてもらって、うれしそうだった。
お店をスルーして、レストランに直行されるより、私がお店の人だったら、嬉しい。
中庭の見えるカウンター席を通り抜け、2階の個室へ案内された。
食事をお願いするタイミングで、帰りのタクシーの手配を、あなたがスタッフの女性にお願いした。
彼女は、いったん戻った後、タクシーの予約が混み合っているので、路で拾うほうが早いかもしれませんと、あなたに告げた。
あなたは、にっこり微笑んで、「それがいいですね、ありがとう」と彼女に伝えた。
そのやりとりが、いかにも優しい。
まさに。
お麩のような優しさを感じた。
帰りに、もう一度、1階のお店に立ち寄った。
さっき、やり取りしていたスタッフの女性が、もう昔馴染みの顔で、微笑んだ。