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#923 今、誰かが呼んだ。

あなたの呼び止められるセンサーが好き。
あなたと、博物館に来た。
今日は、先にランチの予約をしている。
1日10食限定のメニューがある。
営業時間の最初に入れば、きっと大丈夫。
レストランには、ミュージアムの中から、入れる。
外からも入口があるけど、
「特別に」
と、中から通るコースを案内してもらった。
またしても、エコヒイキコース。
レストランに続く回廊に、見とれてしまった。
左手に、お庭が見える。
まっすぐ、突き当りが、レストラン。
お庭から、夏の芝生の香りが漂う。
お茶室の露地。
俗世から、切り離される。
まっすぐな回廊が、歴史をタイムスリップするタイムマシーンに感じる。
あなたが、立ち止まった。
お庭とは、反対の右側の柱を見た。
真っ黒な板のような柱。
『2001年宇宙の旅』に出てきた黒い石板を思わせる。
あなたは、しばらく眺めていた。
あなたにつられて、私も、眺めた。
あらっ?
何か、凸凹している。
光の角度を変えてみた。
凸凹ではなかった。
文字だった。
黒い壁に、文字が刻まれていた。
黒に黒なので、気づかなかった。
あなたが、立ち止まらなければ、きっと気づかなかった。
あなたは、知っていたわけではなかった。
あなたは、文字を見つけて、立ち止まったのではなかった。
壁の文字に、呼び止められて、止まったのだ。
そこには、アジアの偉人たちの名言が、それぞれの国の言葉で書かれていた。
柱の一つ一つの言葉を、味わった。
限定10食は、間に合わなかった。
それ以上のものを、手に入れた。



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