#933 風が、甘えている。
あなたの涼しい顔が好き。
毎日、猛暑日を、連続で超えている。
いよいよ、今日は、酷暑日を記録。
そんな中。
あなたは、ジャケットを脱がない。
ネクタイを締めている。
襟を止めるカラーバーまでしている。
それでいて、涼しそう。
7月・8月だけにかぶるパナマが、さらに涼しさを増す。
あなたが、暑いというのを、聞いたことがない。
私が言った時には、「暑いよね」と同意してくれる。
自分からは、言わない。
「子どもの頃、熱帯の大阪で育ったからね」
と、あなたは、笑っている。
汗をダラダラかいているのも、見かけない。
汗をハンカチで、拭っているところも、見たことがない。
「夏休みは、屋外プールの水練学校に、毎日、通ってたから」
クーラーの効いた涼しい部屋にいても、炎天下にいても、あなたは同じ顔。
涼しい顔。
真冬でも、変な言い方だけど、涼しい顔。
クーラーは、あまりかけない。
窓からの自然の風が、あなたは好き。
「吹いたり、吹かなかったりが、いいね」
扇子を使う。
扇子も、ガシガシあおがない。
まるで。
扇子が、勝手に、揺れているように見える。
あなたが、扇子をあおいでいるのではない。
あおぐ扇子を、あなたが支えているだけのように、見える。
だから、涼やか。
あなたの手は、全く動いていない。
扇子が、風に、なびいている。
夏涼しく、冬暖かい。
あなたが、手を離すと、扇子が風に乗って、舞っていく所が見えた。