#935 渡す場面を、思い浮かべて。
あなたのプレゼントの買い方が好き。
あなたと、博物館。
1階に、チケット売り場と、ミュージアムショップがあった。
展示室は、2階から、4階まで。
通常、先に展示を見てから、帰りにミュージアムショップに寄る。
そこは、あなた。
まず、ミュージアムショップを観る。
観方が、真剣。
ミュージアムショップの観方ではない。
貴重な芸術品として観ている。
あなたにとって、ミュージアムショップの品は、芸術品と同じなのだ。
「女性向けには、どれがオススメですか」
あなたは、スタッフの女性に、聞いた。
「お土産を買ってきてと、頼まれたんです」
「おいくつくらいの方ですか」
「あれっ?」
あなたは、頭をかしげた。
あなたの中には、年齢の概念がない。
女性を、年齢では、見ていない。
「若いけど、大人志向の女性です」
その言い方が、いい。
「クマのヌイグルミが人気ですけど」
あなたは、しばらく眺めた。
「ポケットに、入るくらいがいいね」
あなたは、渡し方を考えていた。
クマのヌイグルミだと、お土産をもっていることが、あった瞬間バレてしまう。
あなたは、さり気なく、渡したい。
「あっ、これは、シャトレーンだね」
シャトレーンは、女主人のキーホルダー。
ハンプティ・ダンプティのモチーフになっている。
「なんで、こんなものが、こんなところに」
あなたは、嬉しそうだった。
もう、渡す場面を、思い浮かべていた。
私は、ハンプティ・ダンプティのマザーグースを口ずさんだ。
展示室に入る前から、ロマンティックな場面を、見せてもらった。