#937 両足を、揃えて。
あなたの16ビートが好き。
あなたと、ホテルのレストラン。
33階。
エレベーターを降りて、レストランの入口に。
入り口では、スタッフが、お迎えをしてくれている。
予約リストの名前を把握している。
それだけで、安心。
あなたと、ホテルに、安心。
あなたは、遠くから、挨拶をする。
ロングパス。
そして、いい距離のところで、足を揃える。
あなたは、お店に入る時、いつも一瞬立ち止まる。
実際には、立ち止まるのではない。
両足を、揃えている。
かかとは、まだ揃えやすい。
あなたは、かかとだけでなく、つま先まで、揃っている。
そして、揃えた後も、揃える前と同じように、レガートに歩く。
まったく、ひっかかりがない。
とまっていないのに、とまっている。
これが、ダンス。
レストランのスタッフのアイコンタクトと呼吸が合う。
あなたのメリハリが効いているので、スタッフも合わせやすい。
そして、席に案内される。
タワーをぐるりと回って、奥の席に案内される。
それぞれのエリアの担当のスタッフが、会釈をする。
その一人一人に、あなたも、会釈をする。
笑顔で。
アイコンタクトをして。
立ち止まっていないのに、立ち止まって、握手をしている気配を感じる。
立ち止まることは簡単。
立ち止まらないのも、簡単。
立ち止まっていないのに、立ち止まっているように、メリハリを感じるのが、私まで、心地いい。
あなたは、16ビートで、歩いている。
16分休符のタメから、グルーヴ感を生み出している。
席につくまでのアペリティフに、私は、酔っていた。