#949 何百年も、生きながら。
あなたの思い出話が好き。
あなたと、ブリティッシュカーのミニチュアカー展覧会に行った。
ミニチュアカーといっても、おもちゃではない。
実際に、富豪の子どもが乗って楽しむ車。
お父さんが乗っている車と、寸分違わず、小さくなっている。
実際に、乗れる。
シートは、お父さんの車と同じ革張り。
ペダルカーだけだと思ったら、エンジン付きの車もあった。
免許は?
そもそも、自動車草創期に、免許の概念はない。
自転車と同じ。
乗れる人が、乗る。
免許制度が生まれるのは、バスが生まれてから。
あなたが、自動車の歴史を説明してくれる。
まるで、100年以上も前から生きて、見てきたかのように、あなたは話してくれる。
アメリカでは自動車は、移動手段だった。
イギリスでは、貴族の趣味だった。
だから、アメリカで量産した車も、イギリスでは美術品のように作られた。
しかも、アメリカでは運転手が運転するが、イギリスでは、貴族が運転する。
スピードレースでは、レーサーとオーナーは別。
イギリスでは、オーナー自身が、運転する。
レースで事故死した貴族も、少なくない。
戦争中には、貴族は、パイロットになっていった。
007に、ボンドカーが登場するのも、イギリス貴族の伝統。
ブリティッシュカーには、イギリスの美意識が詰まっている。
007のポスターが、展示されていた。
あなたは、007映画の話も、してくれた。
ブリティッシュカーの歴史も、007の映画の話も、あなたの中では、全てが思い出話になっているのが、面白い。
あなたは、ドラキュラ伯爵のように、何百年も、生きているに違いない。
私も、あなたの思い出の中に入れるのが、うれしい。