#950 まわりに、輪ができて。
あなたのダンスが好き。
ブリティッシュカーの展覧会を見て、スイーツのお店に向かっていた。
生演奏が、聴こえてきた。
ライブ・コンサートが始まるところだった。
あなたが、知り合いを見つけた。
一度上ったエスカレーターを、降りた。
「座って」
最前列のど真ん中の関係者席に座らせてもらった。
主催者は、あなたの知り合いだった。
ライブが始まる前、MCがあなたを紹介した。
あなたは、さっと立ち、歌手に握手をし、観客に手を振った。
もちろん、なんの打ち合わせもなしに、ナチュラルに。
知らない人は、リハーサルがあったと思ったに違いない。
ハーフタイムの休憩時間に、応援のロシア人女性のデュオを、主催者があなたに紹介した。
あなたが、ハグをすると、ロシア人の女の子は、驚いていた。
「初対面なのに」
嫌な感じではなかった。
もう一人のロシア人の女の子は、ハグの時、腰が引けていた。
シャイな子であることがわかった。
さり気なくハグができる日本人に初めて出会ったに違いない。
2部は、ノリノリタイムになった。
あなたが回すタオルは、綺麗だった。
手を離しても、まわり続けているみたいだった。
とうとう、観客が、ステージ前で、踊り始めた。
カップルで、踊り始めた。
すると。
さっき、ハグした時、腰が引けていたシャイなロシア人の女の子が、あなたをダンスに誘った。
あなたは、さっと立ち上がって、彼女と踊った。
彼女は、スピンターンをした。
あなたは、彼女を、逆に回転させた。
その時、彼女は、驚いた。
自分が、リードしようと思ったのに、リードされていることに。
踊れる日本人に初めて、出会った。
あなたと、彼女のまわりに、輪ができた。
まわりの人は、女性も、男性も、あなたと彼女のダンスを、楽しそうに見ていた。
この場面は、どこかで見たことがある。
そうだ、シンデレラの舞踏会の場面。
この後、輪の女性たちが、次から次へと、女の子たちが、あなたの前に、踊ってもらいに現れることになることを、感じていた。