#952 機転に、気づく。
あなたの機転に気づくところが好き。
あなたと、新橋の料亭。
さっき、銀座の若旦那衆の日頃のお稽古の発表会があった。
その打ち上げ。
料亭で、カレーを食べるという粋な趣向。
若旦那衆の座長は、芸者鬘を被り、着物に、白塗り。
サービス精神がある。
演舞場で、料亭の旦那の常磐津を味わってから、向かいの料亭へ。
案内された2階に上がると、溢れんばかりの人だった。
この料亭の大広間に、これだけの人が入っているのを、初めて見た。
舞台側に、カレーやお寿司が並んでいる。
が、席はびっしり満席。
座るところはない。
いるはずの知り合いの顔も、座っているので、見つからない。
そんな時。
あなたは、どうするか。
あなたは、まったく焦らない。
窓際に、立ち席のテーブルが置かれていた。
あなたは、そこに立った。
すると、知り合いを見つけた。
向こうも、あなたを見つけた。
ほぼ、同時だった。
あなたは、立つことで、こちらからも、相手からも、見つけやすくした。
席に入ると、もうまわりは、知り合いだらけだった。
知り合いだらけに、した。
芸者の御姐さんが、お酌に座った。
そうなると、あなたは御姐さんとの会話を盛り上げる係。
花街を知らない人に、御姐さんとあなたが、作法を説明する。
花代とご祝儀の違いの話をする。
海外の一流ホテルのチップの渡し方、受け取り方が、いかに洗練されているかを話す。
外国人が握手をするのは、見えないように、手の中でチップを渡すという話をする。
御姐さんが、他の席から、お声がかかる。
あなたは、御姐さんに握手をした。
「いやあ」
御姐さんは、襟元に、すっと手を入れる仕草をした。
御姐さんは、会話から、チップを受け取った仕草をした。
まわりの男性は、その仕草に、気づかなかった。
あなたは、気づいて、微笑んだ。
芸者さんの機転の速さを、生で見れたのが、嬉しかった。