#970 もう一人の、プリンセスに。
あなたのティアラのかぶせ方が好き。
あなたと美の祭典。
美を通して、社会貢献活動をする日本代表選出大会。
ファイナリストも、緊張している。
応援に駆けつけている家族・友人・応援団も緊張している。
審査結果が、発表になる。
歓声が上がる。
受賞者に、サッシュ・ティアラ・盾・目録が、渡される。
あなたも、プレゼンター。
あなたのティアラの付け方が、優しい。
まるで、ディズニー映画の王子とプリンセス。
あなたにつけてもらった準ミスの方が、代表よりも、お得に見えてしまう。
そこだけが、キラキラ輝いている。
ディズニー映画のキラキラの魔法の粉が、降り注いでいる。
あなたがティアラを付ける準ミスの女性が、輝いてくる。
ティアラのかぶせてもらい方が、プリンセス。
私は、見逃さなかった。
あなたの唇が、かすかに動いた。
あなたは、準ミスの女性に、何かを話しかけた。
話しかけることで、緊張をほぐした。
そして、ティアラの美しいかぶせてもらい方を、囁いた。
に、違いない。
私が、ファイナリストだったら。
代表に選ばれるより、あなたにティアラをかぶせてもらいたい。
もう一人のプリンセスが、ここにいた。
選ばれた人たちは、新たな役割が生まれた。
会場の緊張が、歓喜に変わる。
「来年も、また会いましょう」のアナウンスの中、お開きになる。
ホールの通路を帰る応援団の人たちの興奮は、さめやらない。
「緊張したあ」
応援団の独り言に、「僕も、緊張した」とあなたが混じった。
「えっ、審査員の方も、緊張するんですか」
「それは、緊張するよ。責任があるからね」
こういう一体感が、あなたらしい。
その中の一人の女性が、あなたに声をかけた。
「ティアラを、ありがとうございます」
もう一人のプリンセスのお母さんだった。