#974 マネキンに、恋をして。
あなたの美術館での撮影の仕方が好き。
あなたと、美術展。
ファッションの展覧会。
最近、美術館で、ファッションの展覧会が多い。
しかも、人気。
大行列になっている。
さらに、若い女性が多い。
それは、いいこと。
ふだんの美術展に来る層とは、全く違う。
ふだんは、午前中が混む。
年配層が多い。
ファッションの展覧会は、午後が混む。
今日は、朝から大雨だった。
天気予報で、昨日から言っていた。
予報通りになった。
そんな時が、あなたの美術館日和。
大雨は、あなたの美術館巡りのためにある。
普通の人は、大雨が降ると、天気に良い日に切り替える。
あなたは、大雨が降ると、美術館に出かける。
雨なのに行くのではない。
雨だから、行く。
そして、あなたの予報も当たった。
あんなに連日大行列の展覧会が、休館日のように空いている。
同じ展覧会と思えない。
ずらりと、マネキンが、並ぶ。
来館者が少ないので、マネキンのほうが多くなる。
むしろ、マネキンが、私たちを見ている。
全室、撮影OK。
混んでいると、他の人が映り込んで、単体で撮れないところだった。
あなたが、一つのマネキンを撮影した。
見ると、驚いた。
私が見ているマネキンではなかった。
外の窓ガラスの逆光を受けて、モノクロームに浮かび上がっていた。
彼女は、生きていた。
今まさに、向こうを向いた瞬間だった。
あなたは、このマネキンの彼女と、恋をしていた。
あなたは、恋人の写真を撮った。