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#976 メニュー選びの間の情事。

あなたとメニューを選びながらするキスが好き。
あなたと、レストラン。
メニューを渡される。
初めてのお店。
メニューを見るのが、楽しい。
あなたと、一緒にのぞきこむ。
「すいません」
隣のテーブルのカップルの男性が言った。
「メニュー、もう一つ、下さい」
お隣のテーブルでは、メニューを彼女と男性が、各自見ていた。
男性は、パタリとメニューを閉じた。
すぐ決まった。
彼女は、迷っていた。
「迷う……」
それに、男性は黙っていた。
私達は。
一緒のメニューを見ていた。
「迷う……」
私も、同じセリフを釣られて言ってしまった。
美味しそうなメニューだらけだった。
「たしかに。はんぶんこ作戦だね」
あなたは、提案してくれた。
ウエイトレスの女の子と、目があった。
女の子が、笑顔で、ウインクしてくれた。
「素敵な彼ですね」
女の子は、テレパシーを送ってくれた。
ウエイトレスの女の子は、わざと一つのメニューをおいてくれた。
一つのメニューを、顔を寄せ合って、考えるのが楽しい。
私は、メニューで顔が近づいたスキに、あなたにキスをした。
あなたは、逃げずに、受け入れてくれた。
しかも、さりげなく。
隣のテーブルの彼女が、しっかり見ていた。
男性は、スマホをいじっていた。
ウエイトレスの女の子の頬が、ちょっと赤くなった。
女の子は、メニュー選びの間の情事を、一緒に味わっていた。



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