#982 銀河鉄道に、乗って。
あなたの少年の見つめ方が好き。
今日は、あなたの授業。
楕円形の円卓で、ゼミスタイルでの授業。
教室よりも、距離が近い。
「授業ではなく、ミーティング」
とあなたは言う。
まさに、そんな感じ。
8時間、4コマ。
休み時間も、特にないので、途中から参加する人は、その都度、ドアを開けて入ってくる。
ドアが開いた。
一人の少年が、入ってきた。
ジョバンニと出会ったカンパネルラのような少年だった。
「おお、大きくなったな」
あなたは、微笑みながら、言った。
「えっ、会ったことあるの?」
「こんな時に」
あなたは、腕に抱かれているポーズをした。
そのパパが、後ろから、照れくさそうに入ってきた。
あなたは、その少年の名前を呼んだ。
「えっ、どうして僕の名前を知ってるの。まだ、名乗ってないのに」
もちろん、あなたはどう書くかまで、覚えていた。
11歳の少年が、あなたの真ん前に座った。
テキストが配られるたびに、少年は歓声を上げた。
「なんこれ、どういうこと、面白い」
そして、教室のどの大人よりも早く、ノートを取った。
少年は、山田裕貴のような強い目線で、あなたを見つめた。
あなたは、その眼差しを受け止めた。
帰る時、カンパネルラは、言った。
「楽しい」
誰よりも、驚いたのは、パパだった。
「こんなイキイキしている息子を、初めて見た」
と、驚いていた。
もはや、教室は、ジョバンニとカンパネルラの二人の授業だった。
それを、間近で見れるのが、幸せだった。
「銀河鉄道の授業」だった。