#985 椅子が、浮いている。
あなたの妖怪な所が好き。
あなたと、妖怪絵本作家の家に訪問した。
妖怪絵本作家さんは、「妖怪になる」というのが、人生の目標だった。
でも、私の感じでは、すでに「妖怪」だった。
妖怪さんとあなたの出会いも、面白い。
妖怪さんは、あなたに声をかけた。
あなたが、作家であることを、知らずに声をかけた。
声をかけた理由は、
「ただならぬ、オーラがあった」
ということだった。
妖怪には、妖怪がわかる。
妖怪さんは、妖怪。
あなたは、妖怪。
だから、妖怪さんは、あなたに気づいた。
最寄り駅からタクシーで行き場所を、告げる。
「あの不思議な建物ですね」
運転手さんも、ただならぬ建物であることは、知っていた。
門の手前で、あなたは電話をかけた。
妖怪さんが、満面の笑みで、迎えに出てきてくれた。
サンダルは履いているけど、真冬日であるにも関わらず、裸足だった。
「どうぞ。段差ありますから、気をつけて下さい」
裸足であることが、分かった。
床が、傾いていた。
段差ではなかった。
床が、球の形だった。
滑り続ける。
「お好きなところへ、おかけ下さい」
球形の部屋には、椅子がたくさん、置かれていた。
一つとして、同じ椅子はなかった。
一つの椅子に座った。
思わず、転びそうになった。
床が傾いているので、片方の脚が、床に届いていなかった。
あなたは。
低いスツールに座っていた。
スツールの半分の半分の脚は、宙に浮いていた。
ここで、バランスをとれるあなたは、やっぱり妖怪だった。