#997 隠された、スカーフ。
あなたの物語が好き。
あなたと、イタリア家具の内覧会。
家具を見るのは、楽しい。
想像が広がる。
イタリアの家具は、おしゃれ。
機能よりも、美しさを優先する。
美しさのためなら、少しくらい使いにくくても、平気。
軸に、ブレがない。
あなたの部屋にあったガラステーブルのシリーズがあった。
もう、20年以上前から、使い続けている。
有名な建築家が、デザインした。
あなたは、それとは知らずに、気に入って、買った。
有名建築家とのコラボだと気づいたのは、だいぶたってからだった。
それが、いかにも、あなたらしい。
自分の感覚を信じている。
ベッドが、置かれていた。
サイドテーブルに、読みかけの本が、置かれていた。
あなたは。
本を見ていた。
本の内容から、さっきまでそのベッドに、眠っていた人を、思い浮かべていた。
あなたは、きっと考えている。
部屋が、ちょっと、整いすぎている。
あなたの頭の中では。
もし、レイアウトを頼まれたら。
掛け布団は、少し、めくり上げる。
さっきまで眠っていた人が、何をしようと、起き上がったかのように。
シーツの上には、寝ていた人の寝皺が、入っている。
ほんのり、体温が残っている。
ここには、マダムが住んでいる。
掛け布団の下には、紳士もののスカーフが残っている。
さっきまでいた、訪問者。
忘れていったのか。
わざと、置いていったのか。
きっと、マダムが、布団の中に隠していたにちがいない。
あなたの中では、物語が、どんどん進行していた。