#999 降りる時に、もう一度。
あなたの紳士的な態度が好き。
あなたと、名古屋から品川行きののぞみに乗る。
構内は、混雑していた。
30分遅れの案内が出ていた。
山陽新幹線の電線にかかった飛来物撤去が原因だった。
そんな時でも、あなたはイライラしない。
あなたとのホームの待合室も、楽しい。
自分ののぞみ466号が来るのを、あなたは確認してくれている。
私は、楽しんでいる。
30分は、あっという間。
466号、到着。
乗り込む。
あらっ。
あなたの席に、御婦人が座っていた。
あなたは、丁寧に、声をかける。
チケットを見せる。
9号車12D。
御婦人が、少しムッとして、出す。
9号車12D。
次に、号車を確認する。
466号。
すると、御婦人はムッとして、言った。
「これ、225号ですよ」
それに対し、あなたは紳士だった。
「あっ、失礼しました。ありがとうございます」
ドアが閉まらないうちに、降りようとした。
その時。
通路の反対側の窓側にいた女性が、声をかけてくれた。
「この電車、466号ですよ」
その優しい言葉は、あなたにかけながら、御婦人にも聞こえるように言ってくれていた。
御婦人はさらに、不機嫌になって、言った。
「どういうこと。遅れるからでしょ」
「すいません」の言葉はなかった。
「すいません」と言ったのは、あなただった。
御婦人が、怒りながら、出口に向かった。
「どういうこと。閉まったじゃない」
という怒鳴り声が聴こえた。
あなたは、声をかけてくれた女性に言った。
「ありがとうございます。助かりました」
女性が、あなたに声をかけてくれたのは、あなたの態度が、紳士的だったから。
それだけではなかった。
品川で降りる時、もう一度、教えてくれた女性に声をかけた。
「ありがとうございました。助かりました」
女性は、少し頬をあからめた。