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I.L(アイエル)

手塚治虫のI.L(アイ・エル)(電子コミック)レビュー

I.L(アイ・エル) 【電子コミック】

著者 ページ数 クチコミ評判
手塚治虫 196ページ ★★★★☆

失敗作?天才の失敗作は、凡人の成功作よりも遥かに魅力的?

14編の短編から成るオムニバス漫画『I.L』(アイエル)は巨匠手塚治虫の失敗作と言われている漫画作品で、本作は「ビッグコミック」(小学館)にて1969年から1970年にかけて連載されました。

確かに『I.L』(アイエル)の物語は、途中から当初のコンセプトとは外れてしまっています。目まぐるしく移り変わる時代についていけなくなったかつての一流映画監督は、ある日ひょんなことから普段は棺桶で眠り、望む姿に自在に変身することができるミステリアスな女性、アイエルを謎の紳士から譲り受けます。

吸血鬼を思わせるアルカード伯爵は監督に、アイエルを使って現実的なこの世を面白く演出して欲しいとお願いします。アイエルは監督がこうなって欲しい、と思った途端、別れた奥さんや母親、理想的な美女に変身し、現実の世界をドラマチックに演出します。

蛾を異常に愛する変態夫や風来坊なフーテン娘を愛するあまり殺人をおかす刺青師など、どのショートストーリーにも一筋縄ではいかない人物が登場し風変りな物語が続きます。

時代、国を超え、アイエルと監督が織り成す物語は破たんしつつ失敗作と言われながらも強力な魅力を湛え、手塚治虫ファンの間でも特にマニア人気を集めている作品です。ちなみに、アルカード(ALUCARD)伯爵の綴りをひっくり返すと「DRACULA(ドラキュア)」というアナグラムが仕込まれており、またドラキュア城を思わせるお屋敷も冒頭に登場しています。



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