強烈な追体験の社会派作品
『0.5ミリ』は、 安藤桃子の小説デビュー作です。2014年11月には、本作を原作とする同名映画が公開されされ主役には、実妹の安藤サクラを迎えました。
『0.5ミリ』の見どころは、何と言っても追体験してしまうような強烈なリアリティです。全体的には、テレビや新聞などのニュースで馴染みのある「高齢社会の問題」を取り上げた社会派の作品です。
主人公は介護ヘルパーの仕事をしているのですが、ただのヘルパーさんではありません。いうなれば、おしかけ介護ヘルパーさんです。とても人間くさい主人公で、トラブルを抱えた老人の弱みにつけ込んでしまいます。もちろん主人公としては、やりきれない理由からそうした行動にでるわけですが、その思い切りのよさに笑ってしまいます。おしかけヘルパーになってからは、その型破りな行動が痛快でたまりません。さらに、そこから見えてくる濃い老人たちの世界の数々が圧巻です。
現場での取材ももちろんですが、作者の安藤モモ子氏自身に介護体験があるらしいです。だからでしょうか、いくつかエピソードがあるのですが、すべてから強烈な臭いを感じるほどのリアリティがあります。なのに、感動的です。
もちろん、どうしてこんなに心が揺り動かされるのか文学的な理由はわかりません。ですが結局、人間はみんな「死」という不安と闘いながら一人で死んでしまう。しかも現代は幸か不幸か長寿社会で、向きあう時間があまりにも長い。みんな、おかしくなってしまう。
そこで死を理解して生きる直してみる、とでもいうのでしょうか。自分の死を直視することで、この世界のすばらしさを再認識させてくれます。