#160 ノータイムで、口に含んだ
あなたの、躊躇のないところが、好き。
電気を消した、真っ暗なベッドの中で。
あなたの唇に、黒い塊を、むいて差し出した。
食べて。
あなたは、そのまま、口に含んだ。
そんなあなたが好き。
普通、「何?」って、聞くでしょ。
あなたは、「何?」って聞かないで、食べてくれる。
全面的な信頼感が、好き。
私自身が、食べられた気がする。
私も、1つむいて、口に入れた。
黒ニンニクだった。
あなたは、初めてだったのに、躊躇なく、すべて受け入れる。
「何に、効くの?」なんて、聞かない。
「ニオイは大丈夫?」なんて、聞かない。
おいしそうに、食べてくれる。
地球上で、誰も食べたことがなくて、初めて食べる謎の物体でも、あなたは食べてくれる。
珍しいものを初めて食べたのは、きっと、私たちのような仲良しだったに違いない。
地球上から、食べるものがなくなっても、あなたとだったら、生きていけるわね。
あなたは、冷蔵庫から、何かを取り出してきた。
今度は、あなたが、私の唇の前に、何かを差し出した。
私は、ノータイムで、口に含んだ。
刺激的な味がする。
甘いのに、辛い。
「マヌカ・ハニーだよ」
ニュージーランドのマヌカの木から採られたハチミツだった。
黒ニンニクにマヌカ・ハニーを合わせるあなたのセンスが、好き。
私は、あなたの指を味わった。