#169 あなたの影に、包まれて
あなたと、朝デートをするのが好き。
あなたと、待ち合わせ。
うきうきする。
朝日が、背中から当たって、気持ちいい。
ぽかぽかする。
風はまだ冷たいけど、春の予感を感じる。
あなたと、一緒に、朝ごはん。
足取りも、軽くなる。
ふと、気づく。
地面に、朝日に照らしだされて、私の影が映っている。
それを包み込むように、人影。
影は、帽子をかぶっている。
あなただ。
いつから、いたのかしら。
あなたのことだから、ずいぶんさっきから、いたに違いない。
見つけて、すぐ声をかけるような無粋ではない。
私が、気づくまで、ずっと後ろをエスコートしてくれる。
背中が暖かかったのは、朝日のせいじゃなかった。
あなたのせいだった。
どうしよう。
すぐ、振り返りたい。
でも、もうちょっと、このまま歩いていたい。
あなたに、包まれて。
気づいた時、肩が、ぴくっとなったから、あなたは私が気づいたことを知っている。
それでも、声をかけないところが、あなたのロマンティックなところね。
シルエットで見ても、見とれてしまう。
アニメに出てくるキャラクターみたい。
スプリングコートの裾が、ハウルのように揺れている。
朝日とあなたの影に包まれて、私は歩いている。
このまま、ふわっと、空に連れて行かれる予感がした。