#181 鋼のように、打たれて
あなたの、職人っぽいところが好き。
DVDで、刀鍛冶の制作現場を見た。
鋼(はがね)を、ひたすら叩く。
叩いて延ばしたたものを、折り曲げる。
折り曲げたものを、ひたすら叩く。
燃えたぎる火の中に入れて、焼く。
無限に折り返されることによって、刀は強くなっていく。
飛び散る火花。
高周波の金属音。
手に伝わる振動。
水に入れた時に舞い上がる水蒸気。
黙々と、職人の作業が進められる。
私は、感じていた。
折り曲げられ、槌で打たれ、火にくべられ、水に入れられる刀に、私は感情移入していた。
私も、こんな風に、されたい。
あなたは、鋼を鍛える職人。
私は、火にくべられ、真っ赤になる。
水に入れられ、水蒸気を上げる。
延ばされては、折り曲げられる。
延々と、繰り返される。
私の身体は、真っ赤に燃える。
身体から、火花が舞い上がる。
そして、水。
冷たい水が、一瞬で、熱湯になる。
熱湯は、次の瞬間、水蒸気になる。
こんな心地いいリズムで、打ち続けられる鋼が、陶酔していくのがわかる。
鋼が打ってほしいところに、職人の槌が、1ミリの誤差もなく、振り下ろされていく。