#183 私がイクのが、わかる
あなたの声が、好き。
あなたは、声を出さずに、声を出す。
あなたの声は、口から出てこない。
あなたの身体の中から、出てくる。
バイクで、背中に耳をつけて、聴く時のような声。
あなたの声は、口ではなく、あなたの身体から聞こえてくる。
私も、あなたの声を、耳では聴いていない。
私の身体で、聴いている。
自分の声を、自分の身体で聴いている感じと同じだ。
あなたの声は、音ではない。
振動だ。
空気を震わせる。
私の身体を、震わせる。
あなたの身体の中から、私の身体の中に、伝わってくる。
空気の振動が、私の全身を、包みこむ。
録音したら、きっと何も入っていないに違いない。
よく見ると、あなたの口は、まったく動いていない。
音に合わせて、後から動いているようにさえ見える。
録音したら、きっとブーンという振動音だけが入っているに違いない。
なのに、聞こえる。
あなたの上にまたがって、あなたの声の振動を感じている。
「イクッ」
あなたの小さい声が、聞こえた。
その声で、私はイッてしまった。
あなたは、イッていない。
あなたが言った「イクッ」は、あなたがイキそうということではなくて、私がイキそうということだった。
なんで、私がイク瞬間が、わかるのだろう。
「また」
その声と同時に、私はイッてしまった。