#188 水が、流れるように
あなたの、水のようなところが好き。
あなたは、水でできている。
形があるようで、形がない。
どんな形にもなる。
水が無限に形を変えるように、あなたの身体はどんどん形を変える。
あなたに、キスをする。
吸い込まれるように、キスをする。
キスをしにいっているわけでもなく、されているわけでもない。
それは、水が流れるように。
重力に従って、私の唇は、あなたの唇に、流れていく。
私の身体も、あなたの身体に、流れていく。
水が、流れていくように。
どんなに、離れていても、あなたに流れていく。
今日、外で、待ち合わせをした時。
あなたは、遠くからでもわかる。
雑踏の中で、浮かび上がっている。
あなたの身体全体が、微笑んでくれている。
そして、あなたに、水が流れるように、身体ごと、投げ込まれていく。
今から思うと、100メートルは離れていたはず。
100メートル離れていても、水は流れていく。
釣り糸があって、リールで戻されるように、私の身体は、あなたの唇に、吸い込まれていく。
あなたは、受け止めてくれる。
この一連の流れが、心地いい。
これ以外の動線が、見当たらない。
あなたが、漁師なら、私は、あなたに釣り上げられたい。
抵抗できない。
抵抗なんて、しようと思わない。
今も、こうして、あなたに、水が流れるように、吸い込まれていく。