#194 図書館で、あなたの匂いがした
図書館で、あなたに愛されるのが、好き。
最近、図書館に行き始めた。
どうして、今まで行かなかったんだろう。
こんなに近くにあったのに。
前をいつも通っていたのに。
こんな、静かなところがあったなんて。
小さな足音が、聞こえる。
ページをめくる音。
遠くで、咳(せき)をする音。
カーペットの上で、椅子を引く音。
ペンの音。
遠くの遊ぶ子供たちの声が、かすかに聞こえる。
かなり遠くの音まで聞こえるということは、それだけ静かだということ。
書棚に、入る。
本の香りがする。
図書館は、公園の中にある。
書棚に入ると、森の中にいる感じがする。
夜の図書館は、空いている。
ほとんど、人が通らない。
本を見ているというより、本に見られている感じがする。
本の香りに包まれながら、書棚で、あなたにキスされたら。
本の隙間を通して、向こう側に、あなたがいる気配がした。
あなたは、突然、本棚から、現れる気がする。
閲覧室の隣に、気がつくと、座っている。
黙って、並んで、勉強している。
それだけで、ベッドで激しく愛しあっているより、もっとドキドキした。
本の匂い。
思い出した。
これは、ベッドでかいでいる、あなたの匂いだった。