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#202 「妄想日記」に、登場させて

 あなたの「妄想日記」に、書いてもらうのが、好き。
 初めてあなたに会った時、私は不思議なことを、言った。
「初めまして。『妄想日記』に、登場させてください」
 不思議だった。
 自分でも、そんなことを言うつもりはなかった。
「妄想日記」は、フィクションのふりをしたノン・フィクションでしょ。
「『妄想日記』に、登場させてください」ということは、「抱いてください」って言ってるようなもの。
 我ながら、いいセリフが出た。
 勝負強い。
 あなたは、にっこりほほ笑んでくれた。
 受け入れて、もらえた。
「もう、登場しているよ」
 えっ、どういうことなのかしら。
 知らないうちに、私は、「妄想日記」の世界の中に入っていた。
「『妄想日記』に、登場させてください」という言葉が、「開けゴマ」のような呪文だった。
「じゃあ、今度、いついつね」みたいな、もたもたしているあなたではなかった。
「『妄想日記』に」のところで、あなたは、私をお城の中に、連れて行った。
 これが、魔法。
 気がついたら、もう門をくぐっている。
 なんの抵抗もない。
 あなたは、注射の上手な看護師さん。
「ちょっと、チクっとしますよ」と言う前に刺していて、「えっ」と思っているうちに、もう「終わりましたよ」となる。
 どんなに注射が怖い女の子でも、「もっと、して」っておねだりしてしまう。
「もう、読まれる側だよ」
 読む側だったのが、読まれる側になった。
 不思議の国のアリスの気分。
 もう、戻りたくないと思っているところが、魔法にかかっている証拠ね。



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