2013年このミス1位「64」・本屋大賞2013年2位の見どころ
警察小説に定評のある横山秀夫の長編小説「64」は、県警広報に配属された刑事がたった7日しかなかった昭和64年に起きた未解決の少女誘拐事件・通称「ロクヨン」を巡って奔走する物語です。
この作品の見どころは2つあります。まず1つめは、主人公を取りまく様々な人間模様です。思惑ありげに動く他部署の影、無理難題を押し付けてくる上司、取材方法を巡って対立する記者連、娘の家出に神経を擦り減らす妻。
警察官として、組織の一員として、家庭を支える夫として、誰をどこまで信じ、どう動いていけばいいのか。激流に流されまいと踏ん張る男の苛立ちと迷いは、誰しも共感できる点が大いにあるはずです。そして2つめは、未解決事件「ロクヨン」をなぞるかのように新たに発生する少女誘拐事件の成り行きです。誰が何のためにこんなことをするのか。
人質の安全への配慮と報道の自由は如何にあるべきか。降って湧いた非常事態にいがみ合っていた各人が協力し、犯人の脅迫電話に応じて身代金の受け渡しを追う場面はスリリングで読み応えがあります。また犯人が長い年月をかけ、執念をもって明らかにした真相には驚きを隠せません。2013年このミステリーがすごい!1位及び本屋大賞2013年2位受賞作にふさわしい一冊であると言えるでしょう。