横書きひらがなの芥川賞受賞作品
「abさんご」は、文藝春秋から出版されている、黒田夏子著作の小説です。著者は、75歳にて本作で早稲田文学新人賞を受賞しデビューを果たしています。また、第148回の芥川賞受賞作品でもあります。
著者が半世紀以上ひたむきに文学と向きあい完成させた、全文横書き、固有名詞や鉤括弧及びカタカナを一切使わない、日本語の限界に挑んだ超実験小説です。本作品「abさんご」は、昭和の知的な家庭に生まれたひとりの幼子が成長し、両親を見送るまでの物語となっています。その文体の特異さから、やはり、すらすらと一気に読み進めることができる小説とはいえないでしょう。それでも、その技巧を重ねられた文体の美しさや、ゆっくりと1文字ずつ、1フレーズずつ読み進めることによって得られるイメージや意味を、自分の中で醸成していくことができる魅力があります。
著者である黒田夏子の意図のひとつも、そこにあるのではないかと考えられます。物語に引き込まれ一気に読み進めることができる物語の魅力もあれば、この作品のような魅力もあるのでしょう。また、黒田夏子さんはこの賞を受賞した際、すでに75歳で芥川賞受賞時点において史上最高齢となりました。横書きや、作品の多くがひらがなで綴られている点など、抵抗感がある、ないとはっきり分かれる作品でもあります。
やはり、高評価を出す方は独特の表現が特殊だからこそ醍醐味を感じられたり、異色さが際立つ作品と称賛したりしていますが、反対にひらがなの多様により理解しづらい点や、文学的な難解さではない読者への負担を前面に出して、低評価されている方も中にはおられるようです。是非ご自身の目で確かめてみください。