あちらの世界とコチらの世界を描く
手塚治虫の作品として、マイナーな作品と分類されるであろう本作品『日本発狂』は、それもそのはず連載誌が学研より出版されていた高一コース(現在廃刊)に1974年~1975年に連載されていた作品です。
まず今日では多くの若者が興味が引きそうなこのタイトルですが、なかなか発狂しません。日本国民が発狂するのは物語の終盤の方です。タイトルから想像するに徐々に日本国民が発狂していきおぞましい世界が展開されるのかと思いきや、発狂して怒り狂うといったほうが正しいでしょう。日本人強いです(笑)。
物語の内容は大きく分類すれば心霊とSFといいったところでしょうか。タイトルほど怖くおぞましいものではなく、設定が面白いなと思える作品です。主人公の北村市郎ことイッチは、夜間高校に通う少年である日、深夜に謎の集団に遭遇し心霊現象を体験します。そこから心霊の世界に関わるようになるのですが、この心霊の世界のあり方が非常に興味深いです。この世(我々が暮らす現世)とあの世(死んだ人が行く死後の世界)は、表裏一体で、この世で死ねばあの世に行き、あの世で死ねば現世で生まれるといった世界観が造られています。>もっとみる |