電子書籍の書評ランキング

 
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文藝・小説・エッセイ・詩集

第三の嘘 【電子書籍】

第三の嘘 著者 ページ数 クチコミ評判
アゴタ・クリストフ(著)/堀茂樹 (訳) ページ ★★★★☆

悪童日記シリーズ完結編

『第三の嘘』は、アゴタ・クリストフの作品で『悪童日記』『ふたりの証拠』に続くシリーズ完結編です。この作品を読み、私のような「かんじやすくない」人間が感想を述べれば、「もやもや」感に支配されていると答えます。三部にあたる本作『第三の嘘』はストーリー構成が複雑で、ぼんやり眼をくばらせていると展開を追うのが難しく、気を抜くと混乱しそうになります。なんどページを戻って読み直す羽目になったことか・・・。 多くの描写を省きネタバレ的に「第三の嘘」をまとめるならば、主人公は「ぼくら」の話を書いた半身である二部の主人公「リュカ」の話を書いたクラウスと名乗る>もっとみる

0.5ミリ 【電子書籍】

0.5ミリ 著者 ページ数 クチコミ評判
安藤桃子 318ページ ★★★

強烈な追体験の社会派作品

『0.5ミリ』は、 安藤桃子の小説デビュー作です。2014年11月には、本作を原作とする同名映画が公開されされ主役には、実妹の安藤サクラを迎えました。 『0.5ミリ』の見どころは、何と言っても追体験してしまうような強烈なリアリティです。全体的には、テレビや新聞などのニュースで馴染みのある「高齢社会の問題」を取り上げた社会派の作品です。 主人公は介護ヘルパーの仕事をしているのですが、ただのヘルパーさんではありません。いうなれば、おしかけ介護ヘルパーさんです。とても人間くさい主人公で、トラブルを抱えた老人の弱みにつけ込んでしまいます。もちろん主人公としては、やりきれない理由からそうした行動にでるわけですが、その思い切りのよさに笑ってしまいます。おしかけヘルパーになってからは、その型破りな行動が痛快でたまりません。さらに、そこから見えてくる濃い老人たちの世界の数々が圧巻です。>もっとみる

アスクレピオスの愛人 島清恋愛文学賞受賞作【電子書籍】

アスクレピオスの愛人 著者 ページ数 クチコミ評判
林真理子 361ページ ★★☆

魅力的なヒロインが躍る「現代版 白い巨頭!?]

『アスクレピオスの愛人』は、林真理子著作の2013年島清恋愛文学賞を受賞作品です。 アスクレピオスという耳慣れない言葉は、ギリシャ神話で医術を司る神を指します。そして、蛇の巻き付いたアスクレピオス杖はWHO(世界保健機関)のシンボルです。 主人公は、そのWHOでメディカルオフィサーとして働き、世界中を飛びまわってウィルスと戦っている女性、佐伯志帆子です。林真理子さんが描く女性と聞けば、見どころたっぷりなのが期待できるこの作品の主人公は、崇高な仕事をする昼の顔と、奔放さを見せる夜の顔の両面を見せます。昼は感染症の最前線で働き、夜は恋人と濃厚な時間を過ごす、このように、佐伯志帆子は実に林真理子的な女性であり、この作品も実に林真理子的な内容です。>もっとみる

八月の路上に捨てる 第135回芥川賞受賞作【電子書籍】

八月の路上に捨てる 著者 ページ数 クチコミ評判
伊藤たかみ 175ページ ★★★

第135回芥川賞受賞作他2篇

第135回芥川賞受賞作「八月の路上に捨てる」は、伊藤たかみの小説。この作品は、ぐさりと突き刺さってくるような心理描写が描かれるタイプのものではありません。純文学としてこれを求めている方には物足りないことでしょう。ですが、ちょっと肩の力を抜いて長い文章を読んでみたいという方にはうってつけです。さらさらと読みやすい文体であまり文芸作品を読まない人でも読み進んでみようという気にさせてくれます。 日常のどこにでもあるような些細な出来事を、ほのぼのとした語りで描いた作品です。心温まる、というわけではないですが、文体が清々しく、読んでいて気持ちが良いです。思わず微笑してしまいそうになります。昭和のレトロ感に通じるところがありなんともなつかしい感じ。>もっとみる

芙蓉千里 センス・オブ・ジェンダー賞大賞【電子書籍】

芙蓉千里 著者 ページ数 クチコミ評判
須賀しのぶ 528ページ ★★★★☆

女性視点の冒険小説!「芙蓉千里」

「大陸一の売れっ子女郎になる」という大志を抱いて日本から哈爾濱(ハルピン)に渡ってきたフミは妓楼・酔芙蓉(すいふよう)の下働きになります。やがて天性の愛嬌と舞の才能を買われて、芸妓の道を歩むことに。ふとしたきっかけで出会った日本人の男、山村に励まされながらも、ひたすら角兵衛獅子を舞い続けます。同僚の美少女タエが美しく成長していく姿や、姉女郎たちの悲しい運命を見つめ続けて成長したフミは、やがて彼女の心の支えが山村の存在だと自覚することになります。 『芙蓉千里』は2012年度にセンス・オブ・ジェンダー賞大賞を受賞した須賀しのぶ著の作品です。ジェンダーと言っても激しい性的描写はなく、一般文学として読みやすい作品となっています。>もっとみる

銀翼のイカロス 【電子書籍】

銀翼のイカロス 著者 ページ数 クチコミ評判
池井戸 潤 376ページ ★★★★☆

あの半沢直樹シリーズの第4弾

池井戸先生待望の新作「銀翼のイカロス」。テレビドラマの印象が強いため、小説を読んでいてもあの強烈でエッジの立った登場人物たちが頭の中で動き回っていました。さて、今回の「銀翼のイカロス」ですが、既に2度も再建計画を受け業績悪化が著しい民間航空会社の帝国航空だったり、新政権となった進政党など、読んですぐに「ああ、このモデルはアレだな」とわかるくらいわかりやすい会社や政党が登場します。 分かりやす過ぎるので逆にガッカリしちゃったんですが、読み進めるうちにそれが逆に強い感情移入へと変わっていき、熱量を持って最後まで読むことができたと思います。(池井戸先生はその辺は意識的にやっているのかな?) 今回の半沢直樹の敵は、その帝国航空を巡る進政党の政治家である白井国土交通大臣、党の重鎮である箕部議員、そして白井大臣が打ち出した「帝国航空再生タスクフォース」というプロジェクトのリーダーである弁護士の及原、などといった面々。 帝国航空の債権の放棄を半沢たちに叩きつける及原弁護士たちと、債務をしっかり弁済して自力での再建を目指す方向性を掲げる半沢たち、という構図になっています。>もっとみる

代理処罰  日本ミステリー文学大賞新人賞受賞【電子書籍】

代理処罰 著者 ページ数 クチコミ評判
嶋中潤 335ページ ★★★★☆

家族愛を考えさせられる、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品

「代理処罰」は嶋中潤の作品で、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作で、何度もこれまで最終候補に残りながらも苦節14年を経ての渾身のミステリー作品です。 この作品の見どころは、高校生の娘が誘拐されて、サラリーマンの岡田に2千万円の身代金を要求されてます。更に受け渡しの条件に母親を指名されますが、妻は事故で女性をひき殺してしまい故郷であるブラジルに逃亡して行方知れずとなっていました。ブラジルに渡って、家族を捨てた妻を連れて帰らないと娘は救えません。絶体絶命の父親と、母親の謎めいた失踪、そして誘拐犯の真の目的と気になるところばかりです。>もっとみる

苦役列車 第144回芥川賞受賞作品【電子書籍】

西村賢太の苦役列車(電子書籍) 著者 ページ数 クチコミ評判
西村賢太 147ページ ★★★☆

2010年下半期第144回芥川賞受賞の私小説

中編小説「苦役列車」は、2010年に文芸誌「新潮」に発表された作家西村賢太の小説作品です。2010年下半期の第144回芥川龍之介賞を受賞し、授賞式で「風俗に行こうと思ってた」と言う発言も話題を集めました。 「友ナシ、金ナシ、女ナシ。この愛すべき、ろくでナシ」と言うキャッチコピーで2012年には映画化されていますが、映画も日本アカデミー賞やキネ旬ベストテンなど、数々の賞を受賞しています。 昭和後期の日本を舞台に、19歳だった主人公北町貫多の劣等感と怒りに満ちた日々が綴られています。作者の西村賢太自身、波瀾万丈な人生を送っている私小説家で、主人公の貫多に自分の経験が反映されています。 苦役列車と言うタイトルから連想させる通り、主人公の人生は苦難に満ちたもので、単純労働で日銭を稼ぐ毎日を過ごしています。>もっとみる

グイン・サーガ  日本SF大賞特別賞受賞作品 星雲賞受賞作品 【電子書籍】

グイン・サーガ豹頭の仮面 著者 ページ数 クチコミ評判
栗本薫 285ページ ★★★★

圧倒的な大河ロマン

グイン・サーガは、栗本薫による作品で、まさにサーガの名に恥じぬ大河小説です。国の勃興、国と国の争い、人々の営みなど見どころが満載です。平成21年に日本SF大賞特別賞を受賞し翌年の平成22年には星雲賞の日本長編部門を受賞しました。グイン・サーガ本編である正伝130巻、外伝21巻(1作だけ上下巻があるため22冊)が発表される壮大なファンタジー小説です。残念ながら筆者が亡くなられたため未完となってしまいました。 まずこの小説は歴史小説であると頭に入れて読んでいくと、また違った面白さを味わえる作品です。文化と魔術の国であり、青い血を守りつづける王国神聖パロ、ユラニア、モンゴール、クムからなるゴーラ、武の国であるケイロニア、この3つの国に起こる様々な歴史が描かれてあります。登場人物の数もかなりの人数にのぼります。 主人公はグインと呼ばれる豹頭の男であり、記憶をなくしています。その彼が自分探しをつづけていくうちに、様々な人々との出会いをくり返していくのが話の本流ですが、グインから離れた場所の話も多くあるため世界観の広がりはすさまじいものがあります。>もっとみる

64 (ロクヨン) このミステリーがすごい!2013年1位 本屋大賞2013年2位【電子書籍】

64(ロクヨン) 著者 ページ数 クチコミ評判
横山秀夫 647ページ ★★★★☆

2013年このミス1位「64」・本屋大賞2013年2位の見どころ

警察小説に定評のある横山秀夫の長編小説「64」は、県警広報に配属された刑事がたった7日しかなかった昭和64年に起きた未解決の少女誘拐事件・通称「ロクヨン」を巡って奔走する物語です。この作品の見どころは2つあります。まず1つめは、主人公を取りまく様々な人間模様です。思惑ありげに動く他部署の影、無理難題を押し付けてくる上司、取材方法を巡って対立する記者連、娘の家出に神経を擦り減らす妻。 警察官として、組織の一員として、家庭を支える夫として、誰をどこまで信じ、どう動いていけばいいのか。激流に流されまいと踏ん張る男の苛立ちと迷いは、誰しも共感できる点が大いにあるはずです。そして2つめは、未解決事件「ロクヨン」をなぞるかのように新たに発生する少女誘拐事件の成り行きです。誰が何のためにこんなことをするのか。>もっとみる