電子書籍の書評ランキング

 
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歴史・地理

小説 土佐堀川 広岡浅子の生涯【電子書籍】

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古川智映子 193ページ ★★★★☆

2015年度下半期朝ドラの原作

 「広岡浅子」という名前にピンとこなくても、NHKの連続テレビ小説「あさが来た」といえば誰もが一度は耳にしたことはあるだろう。2015年10月の放映開始以降、連続して20%代の高視聴率をキープしている作品である。テレビ離れの風潮をもろともせず、視聴者からの人気は高く反響も大きい。最近ではある登場人物の最期の出演が世の女性たちに「五代ロス」を引き起こしたとニュースにもなった。なぜこんなにも人の心を鷲掴みにしてはなさないのか、そのヒントは「あさが来た」の原案にもなった本書に記されている。>もっとみる

包丁人侍事件帖 将軍の料理番 【電子コミック】

包丁人侍事件帖 将軍の料理番 著者 ページ数 クチコミ評判
小早川涼 277ページ ★★★★☆

史実にスパイスを利かせた傑作料理

時代劇ミステリーとも言うべき小早川涼による人気シリーズ「包丁人侍事件簿」の一冊が「包丁人侍事件帖 将軍の料理番」です。 天性の鋭い嗅覚から江戸城の台所人として仕えている鮎川惣介は、身分的には高いものではないものの、度々将軍からお声がかかり、話し相手をさせられています。 そのやっかみもあって「台所に身をやつした御庭番」などと揶揄する声もあり、本人もそれを知らないわけではないものの、持ち前の飄々とした性格で荒立てるでもなく過ごしています。幕府に絡む謎などを嗅ぎつけては事件に巻き込まれ、幼なじみの御広敷・片桐隼人とともにそれを解決してゆきます。>もっとみる

柘榴坂の仇討 【電子書籍】

柘榴坂の仇討 著者 ページ数 クチコミ評判
浅田次郎 27ページ ★★★☆

2014年映画化された短編小説

『柘榴坂の仇討』は浅田次郎の短編小説で、2014年9月に中井貴一主演で公開された同名映画の原作時代小説です。本作は30ページ足らずの本当に短い作品で五郎治殿御始末に収録されている一作品です。映画化に伴いこの『柘榴坂の仇討』を抜粋した形で電子書籍化され¥100という破格の料金で読めることになりました。 まず柘榴坂の仇討の映画化に際しては、雪の静けさが印象的な作品だけれどもよくこれだけ短い小説を映画化したものだと驚きました。登場人物も主人公と妻・秋元と妻・佐橋くらいなもの。細かく言っても主人公の父、俥引きの同僚、若い酌婦くらいなもので、どのようにふくらまして映画化したのか興味はそそられます。 本作の軸となるのは、彦根藩主であり時の幕府の大老である井伊直弼が暗殺された桜田門外の変になります。主人公である志村金吾は剣の腕と、その通っていた道場の背景から井伊直弼の近習となりますが、桜田門外の変の折、自分は手傷を負うことなく助かってしまいます。父母は息子の責を負うため自ら自害し、その結果「志村金吾」は命を取り留めるものの仇討をせよと藩からの命が下ります。志村金吾は幕末から明治政府が樹立しても仇討を諦めるふうはありません。すでに仇討の命を出した彦根藩も1871年の廃藩置県によりなくなっています。>もっとみる

猫間地獄のわらべ歌 【電子書籍】

猫間地獄のわらべ歌 著者 ページ数 クチコミ評判
幡大介 448ページ ★★★☆

このミステリーがすごい!2013年15位のバカミス作品

非常に評価の分かれる作品です。時代小説ミステリーという分類が一般的のようで、現に2013年度のこのミステリがすごい!ランキングでは15位に食い込んでいます。しかし、作中で作者自らがあるトリックを完成させるために『この小説は推理小説ではないではない』と作中人物に言い切らせているあたり、どのように受け取るか評価が分かれるところです。 猫間地獄のわらべ歌、何ともおどろおどろしいタイトルです。タイトル通りわらべ歌に見立てた連続殺人事件が起きるのですが、推理小説におけるこの題材は非常にハードルが高いことで知られています。アガサ・クリスティや横溝正史先生などそうそうたる大作家が名作を書かれているからです。あえてそう言った題材に挑戦されるということは非常に勇気がいることだと思います。>もっとみる

影武者徳川家康 【電子書籍】

影武者徳川家康 著者 ページ数 クチコミ評判
隆慶一郎 639ページ ★★★★☆

仮想歴史を楽しめる「影武者徳川家康」

影武者徳川家康は、『隆慶一郎』作の時代小説でIFものに分類されるであろう作品です。1986年から1988年まで静岡新聞で連載され、後に北斗の拳で有名な原哲夫の手により週刊少年ジャンプで漫画化もされ、さらにはTVドラマ化もされています。 徳川家康といえば、最終的には戦国の世の覇者となり征夷大将軍になりましたが、覇業の中途では何度も死を覚悟するほどのピンチに陥っています。よく知られているのは、三方ヶ原の戦いで武田信玄との合戦で大敗し、小便を漏らしながら城に逃げ帰ったというものと、明智光秀に攻め込まれて織田信長が本能寺で自刃した時、滞在していた大阪から脱出するために悪戦苦闘した伊賀越えなどの話です。 小説『影武者徳川家康』は、史実上は、何度も死地に追いやられてもしぶとく生き残る家康ですが、関ヶ原の合戦で家康は討たれ影武者が代わりに戦い、その後は徳川家康と入れ替わり活躍したという話です。>もっとみる

竜馬がゆく 【電子書籍】

竜馬がゆく 著者 ページ数 クチコミ評判
司馬遼太郎 446ページ ★★★★★

世の坂本竜馬像を作り上げた脅威作

文庫本で全8巻という大長編の作品でありながら、坂本竜馬という一人の人物を魅力的に描かれており最初から最後まで飽きずに読み切る事が出来る作品です。坂本竜馬が見廻り組に暗殺される史実を知っているが上に、8巻目に到達するとこれで死んでしまうのか・・・ともっと続きを読みたいと思わせる作品です。 また「竜馬がゆく」を読んでいただければ、司馬遼太郎の代表作といわれる由縁が存分に理解できる作品です。「竜馬がゆく」の見どころは、司馬遼太郎が描く歴史小説の坂本竜馬という人物の魅力です。そもそもの話をすれば、今日語られる坂本竜馬像というのはこの司馬遼太郎の「竜馬がゆく」が造ったものなのです。 司馬遼太郎の作品というと一種独特な体裁をとっています。必ず閑話というか豆知識が作中にはいることです。へぇなるほどを思わせるトリビアが豊富なので>もっとみる

利休にたずねよ 直木賞受賞作品【電子書籍】

利休にたずねよ 著者 ページ数 クチコミ評判
山本兼一 540ページ ★★★★
市川海老蔵主演で映画化もされ国内外で高評価を得た「利休にたずねよ」ですが、原作の本はまた一段とその風情、わびさびの心をゆすぶられる作品です。見どころは数多くあり、利休が若き日に恋した異国の女とのたった数日の恋にあると思う人もいれば、弟子との思いの交錯にあると思う人もいるでしょう。 しかし、中でも最初から一貫して語られる、天下人豊臣秀吉との微妙な距離、心の機微、その二人が接することにより利休という人物がどのような人物だったのか、そして秀吉という人物がどんな人物だったのかリアルに体感できるエピソードが何よりも引き込まれるポイントです。天才的・絶対的な美的感覚をもって秀吉を凌駕し見下す利休を許せない、しかもいかに金を積み美しいものを取り寄せ技巧を尽くしても利休の境地を超えることも再現することもできない、その憤りから利休や利休の弟子たちの首をその権力を持って刈り取っていく秀吉の人間臭さ、天下人であるがゆえの執拗さ狭量さが生々しくも印象的です。>もっとみる

武士の献立 【電子書籍】

武士の献立 著者 ページ数 クチコミ評判
大石直紀 162ページ ★★★★☆

映画化もされた歴史小説

武士の家計簿に続き映画化された「武士の献立」は、大石直紀の作品です。武士の家計簿が歴史学者である磯田道史氏のノンフィクションのドキュメンタリー的な要素の強い著書を原作としていましたが、こちらは歴史の中にある加賀藩に使えた御料理人を題材として描かれた物語です。 主要登場人物である加賀藩御料理人の舟木伝内とその息子である舟木安信、そして料理の腕を見込まれて嫁となった舟木春は実在した人物であり、舟木伝内と安信の共著である「料理無言抄」や「ちから草」といったレシピ本が、現存しています。身分こそ足軽に近いもので、「包丁侍」と揶揄されていました。>もっとみる

楊家将(ようかしょう) 第38回吉川英治文学賞 【電子書籍】

楊家将(ようかしょう) 著者 ページ数 クチコミ評判
北方 謙三 236ページ ★★★★☆

伝説の日本未翻訳作が北方謙三によって刊行

楊家将(ようかしょう)』は壮大な中華軍記物の一で、長らく日本語訳が出版されておらず銀河英雄伝説などで有名な田中芳樹が「中国歴史ロマンシリーズ」として刊行予定でありましたが実現せず。この北方謙三の作品でようやく読むことができるようになりました。しかしながらこの作品は単なる翻訳ではなく、北方謙三によって息吹を与えられた、オリジナル作品と呼ぶにふさわしい1冊です。 この物語は、北漢の名将でありながら宋に帰順した楊家の長「楊業」を軸に、その息子達と遼との戦いを描いた作品。伝説の英雄と呼ばれた、楊家の漢達の姿が作者の力で、より熱き漢に描かれています。見どころは、やはり白き狼と呼ばれている遼の将軍と楊家の漢達の戦いです。>もっとみる

アイヌ神謡集 【電子書籍】

アイヌ神謡集 著者 ページ数 クチコミ評判
知里幸恵 97ページ ★★★★☆

文化の窓を覗きこむ一冊

アイヌ民族のことは、日本人ならば皆が知っていることだと思います。ただ、その実態についてまで詳しく知っている人というのは少ないのではないだでしょうか?蝦夷地、現在で言うところの北海道の原住民であったアイヌ民族の独特の文化というのは、完全なる継承者が存在していないためだといわれています。 しかし、その文化の断片を知ることは可能です。この本はその文化を知るための一冊になっています。この本においてはアイヌ民族によって謳われたとされる神謡が13編に渡って収録されています。ただ、この本はいわゆる「読みやすい本」ではないことを覚悟して置かなければならなりません。 というのも、「神謡」は音が重要なものであるため、文章の本文はアイヌ語の発音をアルファベット化したもので綴られているからです。意味については注>もっとみる