第4回 感動を積み重ねるか、謎で引っ張るか

キャラクターマンPIP!~全員集合~セカンドシーズン

第4回 感動を積み重ねるか、謎で引っ張るか

2016年11月30日

(1)ショートストーリーのコツ

小池一夫です。

以前、「ショートストーリーの場合、どうやって読者にキャラクターの魅力を伝えたらいいのでしょうか?」と聞かれたことがあります。

ショートストーリー、即ち短編でも、まず主人公のキャラクターを創る。
もちろんすでにあるキャラクターでもかまいません。そのキャラクターに《謎》を「一つ」つけてやります。

たくさんつけちゃダメです。
一つです。
その一つを解くことで、一つの短編ができます。

キャラクターを創って、そのキャラクターで短い物語で終わらせるためには、《謎》を「一つ」つけて、その謎を解く。そうすれば、短い話でキャラクターを起てることができます。

たとえば、本当に短い物語の冒頭を適当に作ってみましょう。

A「あなたは誰を殺したいと思っているの? 殺したい人を僕に言いなさいよ。代わりに殺してあげるから」
B「じゃあ、殺してください」
A「嫌だよ」

という3行の会話。
ここから面白い物語をつくることができます。
最初のAの「代わりに殺してやる」という言葉を発したのはどういうキャラクターなのか。
殺し屋なのか、恋人なのか、悪魔なのか。

そして、2行目で、Bが「じゃあ、殺してください」と言います。
それだけでも、物語になりますが、それだと「普通」ですね。
なるほど、Bが殺して欲しい相手をAが殺すんだな、という流れは、我々にとっては非日常的ですが、物語としての意外性はありません。

そこで、3行目で前のセリフを「受けない」セリフを持ってくる。
さっき「殺してやる」って言ったくせに、「嫌だよ」って、わけがわかりませんね。
それが《謎》であり、《矛盾》です。
Aというキャラクターに「なんだこいつ」「何言ってるんだ」「なぜ!?」という、謎が生まれるのです。
そのあとに「嘘だよ」と続くのか、「いや、殺してやるけど、その代わりに」と来るのか。
天邪鬼なのか、もっと悪いことを考えているのか、Bのことを愛しているのか。
読者からすると、予想がつかない人物だということになります。
それだけの《謎》で、Aという人のキャラクターが起ちますね。
それで面白いショートストーリーができます。
そう。前のセリフを「受けないセリフ」を使うキャラクターは人の予想を覆すキャラクターであり、そういうキャラクターこそ面白いのです。
そして、Aの発言の《謎》、Bとの関係性を掘り下げて物語にすると、面白いショートストーリーになるでしょう。
短編の場合は、大きな謎を追いかけないこと。
それが大事ですね。

(2)積み重ねる物語、謎で引っ張る物語

たとえば、ある町にぶらっと風来坊が現れる。
その町には、なんらかの問題やトラブルがあるのですが、それに風来坊が巻き込まれて、結局それを解決して、そして風のように去っていく。

時代劇や西部劇、ロードムービーなどでお馴染みのパターンですが、これは1エピソードは短編、ショートストーリーの形をとっていますね。
黒澤明の『用心棒』『椿三十郎』もそうですし、『木枯し紋次郎』なんかも「あっしには関わりのねえことでござんす」といって、結局事件を解決して町を出ていきます。
『水戸黄門』もそうですね。私の『子連れ狼』も初期はこのパターンでした。
このように、個性的なキャラクターが、旅をしながら次から次へと、小さな事件を解決していく物語。
これは、出ていく時は、「事件を解決した時」ですから、きわめてシンプルなものです。
そこに、小さな発見や《感動》があり、小さな満足がある。
それぞれの小さな物語を横軸として、それらを貫く大きな物語をつくれば、それが縦軸となり、壮大な物語へと成長します。

こういう小さな物語、短編を重ねて、大きな物語を構築していく連作短編という手法があるのと同時に、連載漫画や、連続ドラマのサスペンスの場合は、次から次へと《謎》を重ねていき、息をつく暇をあたえないような「ジェットコースター」的なものもあります。
最近のアメリカンドラマで顕著ですが、漫画でも《謎》で次回へのヒキをつくり、次の《謎》をどんどん重ねていくという手法はよく用いられます。
毎回、最高のテンションで終わり、「次はどうなるんだろう」と思って次の回を読むと、違う場面からテンションを下げたところから始め、また最高のテンションで次へのヒキをつくって終わり……というのを繰り返すという手法もありますが、やりすぎると、「最後まで読んだけど、結局、なんだったんだ?」みたいな作品になってしまうこともあります。
べつに、それが悪いといっているわけではありません。
それはそれで正解なのです。
読んでいる間、ドキドキハラハラでき、サスペンスを感じて興奮できる。
ドバドバと体内に感情ホルモンが出て、続きが楽しみで仕方がない。
そういう体験ができるというのも、エンターテインメントの一つの価値です。
続きが気になって仕方がない物語ですから、単行本がドンドン出て、次々売れる。
作家としては大成功でしょう。

でも、やはりそれだけでは、さびしいですね。
《謎》で物語を引っ張るのと、短編を連ねて《感動》を重ねていくテクニック。
これは、エンターテインメントの両輪なのです。
連載の最初の頃は、一話完結のエピソード、短編的な小さな物語の積み重ねで、読者を引き込み、キャラクターを丁寧に起てていく。
そして、キャラクターの人気が不動のものになれば、長期連載として、大きな物語へとシフトしていくのが、長期連載ではよく用いられます。

以前、《主》《謎》《技》《感》というお話をしましたように、《謎》も《感動》も、どちらも重要なことです。

たくさんの作品を通して、《謎》と《感動》のバランスを身につけるようにしましょう!

それでは!

(次回、12月7日掲載予定です!)

【コラム】「キャラクターマンPiP!(ピッピ)~全員集合~」はこちら

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小池一夫
作家・漫画原作者
 中央大学法学部卒業後、時代小説家・山手樹一郎氏に師事。70年『子連れ狼』(画/小島剛夕)の執筆以来、漫画原作、小説、映画・TV・舞台等の脚本など幅広い創作活動を行う。  代表作に『首斬り朝』『修羅雪姫』『御用牙』『春が来た』『弐十手物語』『クライング・フリーマン』など多数。多くの作品が映像化され、その脚本や主題歌の作詞なども手がけている。  また、1977年より漫画作家育成のため「小池一夫劇画村塾」を開塾。独自の創作理論「キャラクター原論」を教え、多くの漫画家、小説家、ゲームクリエイターを育てる。  主な門下生としては、『うる星やつら』の高橋留美子、『北斗の拳』の原哲夫、『バキ』の板垣恵介、『サードガール』の西村しのぶ、『軍鶏』のたなか亜希夫など多数。  ゲームでは『ドラゴンクエスト』の堀井雄二、『桃太郎電鉄』のさくまあきらなど。

 2000年以降は学校教育でのクリエイター育成に力を入れ、大阪芸術大学、神奈川工科大学の教授を歴任。現在は大阪エンタテインメントデザイン専門学校でクリエイターの育成を行う。  また、『子連れ狼』は最も早くに海外でヒットした日本漫画の一つであり、2005年、漫画界のアカデミー賞といわれる「ウィル・アイズナー賞」の「漫画家の殿堂入り」(The Will EisnerAward Hall of Fame)を受賞。  現在も漫画原作を書きながら、コミックコンベンションや講演会などで、日本国内や海外を飛び回っている。

小池一夫先生の著書

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