主人公は、共働きの両親に代わって、7歳年下の妹・くるみを世話してきた姉・市井かりん。
大学生のかりんは、就職活動を行うも妹が好きすぎて、特にこれといってやりたいことが見つからず、もちろん連戦連敗。そんな中、妹断ちのために家を出て、手伝い始めた祖父の喫茶店を引継ぐことになる。「高杉さん家のおべんとう」の柳原望先生が「喫茶店」と「散歩」をとおして成長していく姉妹の姿を描いています。
場所は前作「高杉さん家のおべんとう」と同様に名古屋が舞台。前作が本当にある場所を訪れたのに対し、実際の場所は出てきません。かりんがくるみや同級生と散歩を行って、交流を行い成長していくという形式です。散歩の目的が想いや考え方などを知るというところなので、そのへんは前作と同じ流れを汲んでいるといえます。
場所や流れだけでなく、前作「高杉さん家のおべんとう」の主人公だったハルやくるり、風谷先生などのキャラクターが出てきます。特に、ハルはかりんに入れ知恵を行い、散歩させる方向に持っていく役周りなのでこれからもちょくちょく登場するかもしれません。また、風谷先生はかりんが経営している喫茶店の常連、小坂さんはかりんのゼミの先生を務めるなど色々なところに「高杉さん家のおべんとう」キャラクターが登場する。ちなみに、アナウンサーになって3年後の久留里も登場します。アナウンサーとして人見知りは少しずつ直っているようですが、完全には直ってなさそうです。今後もどのくらい登場してくれるのか楽しみです。
ちなみにくるみは、まんま(胸以外)昔の久留里で、思考がダダ漏れしてしまうところもそっくりです。
今巻は、学生のかりんが就職活動を行うにあたって、妹の世話以外になにもして来なかった大学4年間を取り戻すべく(なにしろ、自分の専攻分野すら知らなかった)、「自分の「原風景」」を探すなかで、自分の原点を思い出すとともにやりたいことを見つけていきます。
現代は時間のスピードに追われて今やっていることに目が向きがちな中、初心を思い出すという作業の重要性を改めて感じることができる作品となっています。
かりんが継いだのが名古屋にある喫茶店ということで、名古屋の喫茶店文化を知ることができます。今でこそ東京にも「コメダ珈琲」などができ、モーニングがついたり、おつまみがつくなどの文化が全国に広がりつつありますが、本当にほのぼのした「THE 名古屋」とも言うべき喫茶店文化というものを作品を通して感じることができます。
次巻以降は、祖父から継いだ喫茶店をかりんがどのように経営していくのかに注目です。
(文:編集部S)