ある日、「本をどんな基準で選んでいるのか」と思った。
作家なのか、立ち読みして面白かったからなのか、あれこれ考えた。
もちろん、それらに惹かれて手を伸ばす。しかしそれ以上に、私の心を掴むのは本のデザイン(装丁)だ。
本のデザイン、ひいては本はファッショナブルであり、アーティスティックだ。
本は様々な色彩を、様々な字体を、様々なサイズでまとっている。
「すっぴん」の本はない。全ての本は、化粧を施しているし、オシャレな服を着込んでいる。
そんなことを思い耽っていることが、『本のよそおい』の連載を行うモチベーションになっている。
「読書の秋」にみなさんは、何かしらの本を読もうとしているかもしれない。
この連載では、選書する新たな視野を提供できればと考えている。
【本をよそおう構成要素】
本をよそおう構成要素は、4つあると感じている。これらはそれぞれの回で詳述する。
・第一回『本のよそおい』(本のデザイン、書店が担う役割の変化)
・第二回『ブックカバーの着せ替え』(フォーマル・カジュアルな本、TPOに相応しい姿の本)
・第三回『BOOK in BOOK・付録』(重ね着した本、アクセサリーを付けた本)
・第四回『本の表紙(装丁)』(メイクした本、ジャケット(カバー)の着こなし)
ブックカバーは、ときには限定版表紙を羽織り、普段とは違かった顔を魅せる。
BOOK in BOOK・付録は、前者は本の重ね着、付録は本がアクセサリーを身につけ、まるでルネサンス期の女王のようだ。
本の表紙(装丁)は、いろいろな色、型、サイズのジャケットを着こなしている。
ファッションは十人十色である。本も同様にそれぞれのよそおいは魅力的だ。
本のデザインは触感や視覚を介してこそ、魅力を感じるのではないだろうか
しかし、本という実体を感じることのできる書店は減っている。
そこで、本のデザイン的側面の議論を展開するまえに、書店について考える。
デザインの博覧会ともいえる書店を知ることは『本のよそおい』を知ることと同義だろう。
次ページでは、変容する書店業態や書店機能の変化について観ていく。