米国大統領選から早1ヶ月。日本人の誰もが予想していなかった、共和党候補ドナルド・トランプが当選した。その当選を2015年12月に予想したのが、今回紹介する『トランプ後の世界 木村太郎が予言する5つの未来』の著者でもあり、フリージャーナリストとして有名な木村太郎氏である。
この本は、木村氏が独自の取材から得た情報を元に、米国、日本のマスコミが伝えられなかった、米大統領選トランプ勝利の裏に隠された米国の真実を明かした一冊である。
主に3つの焦点で書かれている。
1.なぜ、トランプ氏が大統領に選出されたのか
2.トランプ氏の大統領就任前の現在の世界(B.T.)と就任後の世界(A.T.)について
3.トランプ氏大統領就任による日本への影響
1.なぜ、トランプ氏が大統領に選出されたのか
トランプ氏が大統領に当選した理由として、多くの米国人が心の中で思っていた、移民問題や経済格差の問題を声を大にして発言した。日米のマスコミは、「低所得の白人で人種差別主義者で女性蔑視の人たち」のみが支持していると勘違いを起こし、所謂、隠れトランプ支持者と言われる多くの潜在層を見誤ってしまった。そして、これはオバマ政権によって行き過ぎてしまった「ポリティカル・コレクトネス(=政治的正当性)」と言われる「建前論」に疲れてしまった米国人の揺り戻しの結果であると分析している。
2.トランプ氏の大統領就任前の現在の世界(B.T.)と就任後の世界(A.T.)について
木村氏は、トランプの就任前の世界を「Before Trump」(=B.T.)、就任後の世界を「After Trump」(=A.T.)としている。
「B.T.」の世界は、冷戦後から米国や西洋諸国が中心となって進めてきたのが、世界が上手く仲良くやっていくというグローバリズムの世界である。しかし、「政治的に正しい」と思われたグローバリズムを進めてきた結果として、その矛盾の歪みが色々なところに出ているのが、世界の現状である。
その現状を打破するためにトランプが掲げたのが「アメリカ第一主義」である。「A.T.」の世界では、米国はこの「アメリカ第一主義」で動いてくと木村氏は分析しているが、英国のEU離脱や伊国の憲法改正の国民投票や墺国の大統領選など、他国にも反グローバリズムの動きが広まっているといえる。
3.トランプ氏大統領就任による日本への影響
日本国民にとって、一番の注目点は日本への影響だろう。特に当選確定直後からTPPの離脱と在日米軍の問題が上がっている。
しかし、トランプとしては如何に「アメリカ・ファースト」を実行して行くかが問題であり、米国のTPP離脱は確定的であるし、日本の防衛に関してはトランプに限ったことではなかったのだが、その俎上に載っただけとも言える。そういう意味では、日本が戦後先送りにしていた問題(=米国との関係性)と対峙するタイミングであるのかもしれない。
この本は、長年アメリカを取材してきた木村氏がその取材を元に感じたことを著したものである。そのため、今までトランプの情報に接してこなかった、日本人にとっては目新しい情報が多く掲載されている。今後の日米関係、さらには日本の行末を考える上で、ぜひ、読んでおきたい一冊である。
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