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ついに実現!日本を代表するホラー漫画家による対談。日野日出志×犬木加奈子。 二人がホラー漫画に秘める想いとは?そして二人の意外な関係とは・・?(後編)
2016年8月3日


みんな漫画を描いてる時は、魂を削ってる

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――お二人とも「グシャ!」とかなったり、「うわー!」などの恐い表現の作品は、夜中に描かれたりはするんですか?

犬木先生 もちろん。漫画家なんて、夜中に仕事ですから。

日野先生 夜の12時以降が本番だから。

犬木先生 そうそう。大体寝るのが、朝5時とか明るくなって来たらで、吸血鬼のように寝るんだから。

――自分で恐い漫画を描いていて怖くないですか?

日野先生 恐くないですよ。だって、俺が考えて作ってるものなんだから。夜中の12時くらいに家族が全部寝静まってから飲みながら、ちょっとおつまみを入れて、明け方6時ぐらいまでやるわけですよ。一番恐いのはあまりに感情移入が強すぎると、自分の肉体が滅びていく恐さみたいなものが、背中の当たりからゾワゾワって来るの。だから、描いてるものが恐いんじゃなくって、そういう俺の肉体に恐さを感じる。

犬木先生 うん、感情移入しすぎちゃう、主人公に。物語の世界に入っちゃうってことですよね?

日野先生 そうそう。『蔵六の奇病』を描いてる時がそうだったんだよ。なにが恐いかって、絵が恐いとかじゃないの。本当に命がけだったから、これでだめだったら漫画やめようと思ってたの。俺、多分完成できないんじゃないかって思うくらいにボロボロになってたのね、自分の肉体的にも、精神的にも。そうすると背中あたりからゾワゾワゾワって電気みたいな来るんだよ。なんかするとそのまま自分の肉体が破裂しそうな感じになる。もう怖くて、「やっべえ、もうちょっとこれは寝るわっていう感じ」で、そっちが恐い。内容で恐いということはないですね。

犬木先生 だねえ。私も若さに任せてイケイケでね、順風満帆でホラーブームを先頭走って。今から思うと、巨大な軍艦に乗って、大海原を平気で、どんな波を物ともせずに走っていくようなイメージで描いてきたわけ。
それが10年過ぎて40歳になって、こうガタッと肉体的にも落ちてくるわけ。疲れてきてさっきも言ったように、話も尽きてきて、自分が一番苦しいんですよ。人って、本当に苦しいから人に当たっちゃったりするんだと思うけどね。苦しくて苦しくてどうしようもない時に、もう夜中にばーんて倒れちゃったりとかしたの。慌てて、救急車呼んだんだけど、やっぱり過労状態で一晩点滴を打ったりするの。そこからもうかなり精神的に弱っていたと思うんだけども。今まで自分の絵が恐いと思わなかったんだけど、帰ってきて出来上がったカラー絵を見たその瞬間にビクッってしてもの凄い怖かったの。
自分の絵があまりに攻撃的でもうびっくりしちゃって、で、慌てて日野先生に電話して、「あたし、おかしい」って言ったら、「あ、俺もあった、そういう事」って言われたんです。でも、日野先生は「俺はね、いくならいっちまってもいいやって!」言ったんですよ。あたしその瞬間に、「私はいやだ!」って思ったのね、本能的に。このままでいたらきっと私正気を無くすなって思って、そのあと連載を片付けていったの。

日野先生 そういう瞬間あるよね。俺は、そういう経験は『蔵六の奇病』と『地獄変』と、『赤い蛇』の3つだけど。他はもう距離をもってやっているから。でも、その3作品だけは本当にのめりこんでた。もう、自分の体削ってるみたいな。

犬木先生 結局ね、みんな描いてる時って、やっぱりどんなに順調にいってても、どんなに忙しくて荒れていても、結局、魂を削っているんです。あれは本当に、命削ってると思う。

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――それでは名残惜しいのですが、最後に読者に向けてなにかメッセージをお願いします。

日野先生 まあまあ、ゾンビのようにもう1回世の中を。「えっ!?これが日野日出志?」みたいなものをちょっと描きたいと。今までの読者は、「えっ!?」と思うかもしんないけど。
まあでも、俺はこれまである意味、「怪奇漫画家日野日出志」を演じてた部分があるんで、ちょっとそのことには疲れてるんですよ。これは言ってないですが、他にもいろいろ企画を考えてるんですよ、絵本とか。

犬木先生 合うと思いますね。

日野先生 俺の一番の原点にもう1回戻りたい。

犬木先生 最近はホラーテイストとかホラーの恐い絵本とか流行ってるみたいなので、いいと思いますよ。

日野先生 だから、ホラーじゃないっちゅうの!(笑)
ただある時、畑中純先生と一緒になった時に「絵本やりたいんですよねって」言ったらさ、先生が「『蔵六』を絵本でやればいいじゃん」っておっしゃって。「ええ!?それはねえだろう!」って、その時は思ったんだけど。「いや、そりゃ絶対絵本でやったら面白い!」って言うんだよ。絵本って、よい子のためのっていうか一般社会的なものだから、それはそれでいいと思う。相手は子供だから。だから、『蔵六』の話を絵本でというのも「ありかな?」とはちょっと思い始めてる。

――犬木先生は今後の活動の方向性や読者に一言ありますでしょうか?

犬木先生 これからの活動ですか?うん最近原稿を書かせもらっているんですけど、正直言って、なんか違うなって、思っているんですよね。本当に描きたいものじゃないというか、なので描きたいものを描かせてくれるようなところがあれば、いいなーって思っています。

日野先生 どっかあると思うよ。

犬木先生 じゃあ、そういうところ(出版社)、募集してますって書いておいて(笑)私が復帰してから、日野先生もヤキモキしてんのよ(笑)今までずーっと私、「もう描かない」とか「興味ない」とか言ってたりしていて、日野先生も「俺ももう疲れたなー」とかって言ってたんだけど。最近は、「私はまだこれから、こういうの描きたいな」とか「お前はやっぱり、本描けよ」とか言い合っているうちに、自分もブクブク描きたくて描きたくてしょうがないんです(笑)
前は、作家として未熟だったんだろうなって思いますけど、今ならもうちょっとうまく描けるかなと思うので、そういう意味でもう1回再出発したいですね。

(余談)
犬木加奈子先生は小学生の頃に日野日出志先生の漫画を読み、その作品に大きな影響を受けたという。また、インタビュアーの当編集部Tは、同様に小学生の頃に犬木加奈子先生の作品を受け、衝撃を受けた読者の一人だった。
日野先生はそれを聞き、「ほらな、やっぱりそういうことなんだよ。なんだかんだホラー(というジャンル)が制限されるようになっても、俺らが書いたものを書いた読者が大きくなって、こうやって(インタビューや電子書籍などで)俺らを助けてくれるって(笑)。読んだことは絶対に忘れないから」と仰っしゃられたが、この一言は、編集部員にとっても自分たちの原風景はどこにあって、先生たちの作品があり、この業界を今後どう切り拓くかを深く考えさせられた瞬間だった。

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日野日出志(ひの・ひでし)
1946年生まれ。旧満州チチハル市出身。1967年に虫プロ商事発行の『COM』にて月例新人賞に『つめたい汗』が入選してデビュー。
1970年には、人間として存在することの根底的切なさを謳い上げた『蔵六の奇病』や『地獄の子守唄』を発表。その後、活動の場を漫画雑誌へと移し、数多くのホラーや怪奇作品を発表。ホラー漫画界の第一人者としての人気と地位を不動のものとする。漫画以外にも映画監督、絵本作品や児童書、キャラクターデザインなどでも活躍。世界的にも評価されている。大阪芸術大学芸術学部キャラクター造形学科教授。

犬木加奈子(いぬき・かなこ)
北海道出身。1987年、講談社『少女フレンド』増刊『楳図かずお特集号』(講談社)に『おるすばん』でデビュー。
代表作は、『学校が怖い』のタイトルで映像化された『不気田くん』や『不思議のたたりちゃん』などがある。その他長編・短編を問わず多数の作品を発表。また、多くのホラー
雑誌で表紙も担当し、ホラー漫画の女王と呼ばれる。独特の絵柄と世界観で、多くの読者を恐怖に陥れると共に、熱狂的なファンを生み出した。大阪芸術大学キャラクター造形学科客員教授。

日野日出志×犬木加奈子「地獄のたたり展」

20160727tenran会期:2016年8月3日(水)~14日(日)
時間:12:00~20:00
会場:墓場の画廊
住所:東京都中野区中野5-52-15中野ブロードウェイ3F
トークショー&サイン会
日時:2016年8月6日(土)14:00~15:00
原画展「地獄のたたり展」
http://hakaba-gallery.jp/?p=153

【詳細記事】
【サイン会&トークショー開催決定】ホラーマンガ家・日野日出志x犬木加奈子「地獄のたたり展」が中野ブロードウェイで開催。

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