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肩書は「絵本作家」!? 芸人キングコング・西野亮廣の絵本作家としての活動を追う!
2016年8月12日


いつの世も「出る杭は打たれる」と言われるが、その言葉には「出すぎた杭は打たれない」という裏の意味がある。
芸能界はある意味「出すぎた杭」の集まりだが、そんな中でもお笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣は別格だ。2001年から始まった大人気バラエティ番組「はねるのトびら」で一世を風靡し、その後数々のテレビ番組に出演、2009年からは絵本作家としての活動を開始し、今年の秋に4作目となる『えんとつ町のプペル』を出版する。
一時はどのテレビ局にも出演していた西野さんが、なぜここ数年はテレビへの露出を減らし、絵本作家の道へ進んだのか。肩書を「芸人」から「絵本作家」へ変更した真意とは何だったのか。
本インタビューでは絵本作家になったきっかけや西野さんが考える絵本の売り方などをじっくりお伺いした!

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テレビに出なくなった時にタモリさんに言われた一言

――今回は、キングコング・西野亮廣ではなく、絵本作家の西野さんにお話をお伺いしに来ました。まずは、絵本を描くようになったきっかけについて教えて下さい。

西野 「はねるのトびら」という番組が二十歳の時に、東京の深夜ローカルでスタートして、5年くらいかけてゴールデンタイムに上がって、毎週視聴率も20%とかとるようになったんです。その時はとにかく露出が正義だったので、全部やったんですよ。朝の子供番組から、「笑っていいとも!」から、グルメ番組から、自分たちのロケ番組から、「はねるのトびら」、音楽番組にMC、大阪の吉本新喜劇の座長までやらせてもらいました。

一通りやらせてもらった25歳の時に、露出が増えて、生活も良くなったし、知名度も上がったけど、スターにはなれていないというか、「芸能界の順番」が全然変わってないなって、思っちゃったんです。相変わらず上には、ダウンタウンさんがいらっしゃって、ビートたけしさん、さんまさん、タモリさんがいらっしゃって、ここの逆転は全然起こってなかったんですよ。

売れてなかったら、逆転できていない言い訳ができた思うんです。でも、そこそこ売れてはいたし、TV露出もして、全部条件が整った上で突き抜けてないってことは、この方法では突き抜けることができないんだなと思ったんです。で、相方の梶原とマネージャーとその当時の番組のプロデューサーや吉本の偉い人たちをみんな呼んで、「ちょっとテレビを1回やめる」と話をしました。

テレビに出る時間が減って、時間が空いたので、なんか人がやってないようなことをすごく時間かけてやってみようと思っていた時に、タモリさんに呼ばれて、「お前、絵を描け」みたいなこと言われたんですね。

――タモリさんは西野さんが絵を描くことが好きなのをご存知だったのですか。

西野 いや、僕絵を描くのは全然好きじゃなくて……。趣味でも、美術を選択していたわけでもないんです。たしかに「笑っていいとも!」で、フリップの横の方にこうちょこちょこっと絵を描くぐらいはやっていましたけど。そしたら、タモリさんがいきなり「お前の性格やったら、絵を描ける」と言ってきたんです。ただ、こっちも絵を描くのは本当に興味が無かったので、「嫌です」って言いました。物語を書くのは好きだったこともあって、「じゃあ、絵本だったらいいな」と。絵本ならうまくいけば、海外持って行けるなって。で、絵本で手打ちにしたという感じですね(笑)。
――絵本を描くようになったのは偶然の産物だと(笑)。物語を書くなら、又吉直樹さんのような小説家というのもあったと思うのですが……。

西野 もちろん、文章を書く方が好きです。小説とかすごく読むんですけど、一度その道へ行ってしまったら、またテレビに出ていたときと同じように行き詰まりがあるような気がしたんです。

その当時の意識としては、「芸能界の順番」を逆転させるためには、海外から仕掛けなくちゃアカンという感じがありました。だから、小説じゃなくて、絵本はありかなと思いました。

言われたからといって、絵を描くのは嫌だけど、文章が見つかるために絵を描くんだったら全然いいなって。そこから5年ぐらいかけて、2009年に『Dr.インクの星空キネマ』を出版しました。

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――『Dr.インクの星空キネマ』を出版された後は、なにか変化などはありましたか。

西野 いや、たいして変わってないんじゃないかな。みんな多分思われると思うんですけど、最初の本を出す時って、もしかしたらこの本をきっかけに日本中の人がびっくりして、いや世界中がびっくりするかもしれないみたいな(笑)。

僕なんか、100万部くらい売れるかもしれないみたいなつもりで描いていたんです(笑)。蓋開けてみたら2、3万部くらいだったんですよ、それでも売れている方なんですけど。でも、そんな思っていたほどの革命は起きなかったなって、肩透かし勝手にくらってるみたいな(笑)。周りからしたら「当たり前やろ」って感じなんですけど、自分の中では、滑ってもうたっていう感じでしたね(笑)。

――今まで、4作絵本を出されていますが、何作目ぐらいから、インパクトを与えているなという手応えを感じ始めたのでしょうか。

西野 2作目として『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』っていうのを出して、「次は、次は大変なことになるぞっ」って思ったんですよ。クリスマスの話だから、発売時期もクリスマスにちょうど合わせて、すごいことになるぞと思ったら、結局それでも何もならなかったんです。ただ、3冊目の『オルゴールワールド』を描いた直後から、取り巻く環境がいろいろ変わっていきましたね。

『オルゴールワールド』はタモリさんが原案なんです。1作目を描いてるときから、すでに原案がありました。2作目まで僕の中で話が出来上がっていて。なので、タモリさんに、「僕、2作目の話まで出来てるから、その後でもいいですか?」って待っていただき、結果的に4~5年くらい待ってもらう形で出したんですよ。

>次ページ「絵本をただ作るだけじゃなくて、売り方をきっちりデザインしようって思った」



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