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幻の名作『極悪貧乏人』が復活へ!! 柳沢きみお先生のマンガ家生活に迫る!!
2016年11月2日


今回は、電子書籍ランキング.comでも連載中の『極悪貧乏人』の作者でもある、柳沢きみお先生です。柳沢先生といえば、ドラマ化でも話題になった『特命係長 只野仁』シリーズで有名ですが、人間のコンプレックスや欲望を描き、多くの読者の心に深く突き刺さる作風で多くの作品を生み出しています。
今回は、その柳沢先生に電子書籍ランキング.com上で続編を掲載予定の『極悪貧乏人』執筆の意気込みと40年間マンガ家を続けてこれた秘訣をお伺い致しました。

翔んだカップルa
※画像は『翔んだカップル』より

マンガ家を続けていられているのは、すごく幸せなこと

――柳沢先生が、そもそもマンガ家になろうとしたきっかけは何だったんでしょうか。 「小学生の時に、すでにマンガ家になろうと思っていた。」などとおっしゃる先生が多いですが、私たちから見ると、その時点で、将来の職業を決めるということはとんでもないことに思えます。小学生の時点でマンガ家という職業の実態をどの程度までわかっておられるのでしょうか。

柳沢 私も小学校の低学年の時にマンガ家になろうと決めていました。マンガは読むのも好きでしたし、描くのも大好きでした。で、結局、そこから一度もぶれることなくマンガ家になっちゃいました。
まあ、無謀といえば無謀なことで、もしマンガ家になれなかったらどうなっていたのやらです。しかも、今日までマンガ家を続けていられるというのも、これってすごく幸せなことだと思っています。
しかし、よく考えてみれば恐ろしい人生を生きてきたものだと怖い気持ちにとらわれることもあります。この無謀な生き方というのは私の人生のすべてに当てはまっていて、よく破滅もせずに、その寸前までいったことは何度もあるのですが、無事に生きてこれたものだと、自分で自分自身が怖くなりますね。実は、まだ私の半分は破滅状態なのかもしれません(笑)。私的なことなので、あまり語ることはいたしませんが。

――めでたく「少年ジャンプ」で『女だらけ』でデビューし、念願のプロマンガ家になる訳ですが、『温泉ボーイ』を最後にジャンプ専属作家からフリーになります。
専属という安定した道を捨て、フリーというリスクの多い道へと踏み出したのには、何か動機があったのでしょうか。
また、最近連載が終了した、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のように数十年を専属作家として過ごし、その作品1本で終わるマンガ家の方もおられます。先生から見て、こういった作家生活はどのように思われるのでしょう?

柳沢 もちろん動機はおおありですよ。私は子供の時から何かに縛られることがとてもいやだったのです。だから専属制というのは、息がつまる気分になって、そこから抜け出したかったのです。連載作品が大ヒットになって、大人気になったらどうだったんだろうとは思いますが、そのまま居続けたとは思えませんね。
『こち亀』はすごいと思いますよ、ほんとうにそのパワーには圧倒されて、「すごいなー! 」と。

翔んだカップルc
※画像は『翔んだカップル』より



――名作『翔んだカップル』からほどなく発表の軸足を少年誌から青年誌へとお移しになっていきます。これは、何かきっかけになるような出来事はあったのでしょうか?
また、作品のテーマも『瑠璃色ゼネレーション』『妻をめとらば』『愛人』『形式結婚』等々の青年期の葛藤やコンプレックスから次第に『大市民』『未亡人』『夜に蠢く』や今回の『極悪貧乏人』といった人間の欲望や業といったものに焦点をあてた作品に移っていきます。
よく、作家の作品表現は、作品中のキャラクターと作家の同一化による自己救済である等ともいわれます。先生の作中キャラクターの変遷は先生の人生における生き方とも関係のあるものなのでしょうか?

柳沢 少年誌から青年誌へというのは、これまた簡単で、私の作品が少年誌で通用しなくなったからにすぎません。作品というのは、売れて何ぼ、読者に読まれてなんぼの世界です。なので、少年誌の世界に未練はなかったですね。
私の作品の変容は自然にそうなっていって、自分自身が特に意識して変えていこうというようなことはなかったですね。自分自身が年齢を積み重ね大人になり、それにつれてきわめて自然に作品が、変っていったんだと思います。
しかし、長い作家人生のどこかで行きづまらずに、よくここまで来れたものだと、いまさらながら冷や汗が流れますね。

――マンガ作品の創作作業の中で、先生がいちばん好きな作業と、嫌いな作業を教えてください。

柳沢 現在スタッフは3人いるのですが、人物は通行人まですべて、背景の一部も私がペン入れをやっています。
好きな作業は下書きが終わってからの人物の顔のペン入れですね。嫌いなのは背景のペン入れで、ほんとうにうんざりしながらやっています。
でも、マンガの作業っていうのは、本当に地味で根気のいる仕事で、もちろん体力も必要です。いや、必要というよりほとんど肉体労働者ですね(笑)。
よく、ここまでもっているな、と自分の体力に感心してしまうこともあります。睡眠と健康には大いに気をつかってやっているので、今日まで来れたと思っています。



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