
マンガの時代の隆盛期から、黄金期へと最高の時代を過ごせたのは幸せ
―― 先生がマンガ以外でいちばん感動した作品を教えてください。小説でも映画でもなんでもけっこうです。また、その作品のどこに感動したのかも教えてください。
柳沢 いっぱいありすぎて、とてもこれが一番と決められないですね。
小説でしたら、司馬遼太郎と松本清張のモノが好きですね。これは凄いなっていうのはいろいろとありますが、何度も読みかえすのはこの二人以外にはいないですね。
映画なら『ゴッドファザー』なんかは何年かに一度は無性にまた観たくなって、ビデオで観返していますね。特に、ロバート・デ・ニーロの出演している部分が最高です。
あと、マストロヤンニとソフィア・ローレンの『ひまわり』も最高です。これも、何度も観返しています。特に画面全体に漂う哀愁とテーマ音楽がいいんです。
やはり、デ・ニーロ主演の『タクシードライバー』も最高ですし、『アラビアのロレンス』『ベンハー』等もすごくいいですし、トルストイ原作の『戦争と平和』、それも、ハリウッド制作のではなく、旧ソ連のセルゲイ・ボンダルチューク監督が制作した、4部作です。これも俳優たちの演技もさることながら、詩情溢れるロシアの大自然の画面的な深み、奥行き感、と相俟って、実にすばらしい作品です!
ギター好きの私にとってはウッデイアレン監督の『ギター弾きの恋』も好きな作品の一つで、時々観返しています。
後、『男はつらいよ』シリーズの初期の、オイチャンが森川信のときの作品はいいですね。それにしても、森川信の急死は痛かった。そこから寅さんは片翼を失ったみたいなもんで、今でも強烈に残念です。
――いま、紙のマンガがものすごい勢いで凋落しています。 週刊誌の隔週刊化され、隔週刊誌の月刊化、廃刊等がこれから続出してくると思います。一方、デジタルのマンガの売り上げは伸び続け、2020年には紙のマンガの売上とデジタルのマンガの売り上げが等しくなると言われています。
こういった大きなマンガ業界の紙からデジタル流れというものを、先生はどのように受け止めておられるのでしょか。
柳沢 演劇が映画に替わり、さらに映画がテレビに替わったように、時代はいつでも便利なもの安易なものへと流れます。その意味では、この流れは、もうしかたのないものと諦めています。自分自身で配信できて、その収入がまるごと得られるようになったら、最高だなぁと思います(笑)。
それにしても、私はマンガの時代の隆盛期から、黄金期へと最高の時代をマンガ家として過ごせたのは、本当に幸せだったと思います。
柳沢きみお(やなぎさわ・きみお)
漫画家。1948年新潟市五泉市生まれ。
1970年漫画家デビュー。1978年少年マガジンにて連載された『翔んだカップル』で、第3回講談社漫画賞少年部門受賞。
今作は大ヒットし、映画化やドラマ化された。
デビュー当時はギャグを主体とする作風だったが、次第に人間のコンプレックスや欲望を描くようになり、多くの読者の心に深く突き刺さる作風へと変わっていった。
その後『大市民』『DINO』『特命係長只野仁』といったヒット作を連発し、漫画家生活46年目を迎える2016年の今も、第一線で漫画を描き続けている。

【関連記事】
【マンガ】『極悪貧乏人』
【特集】電子書籍で大量復刊!!今こそ読んでおきたい柳沢きみお作品
【書評】半生の記(柳沢きみお先生 書評)
【書評】悪の華(電子コミック)
【ニュース】『特命係長・只野仁』の柳沢きみお 幻の名作『極悪貧乏人』 完結へ向けてのクラウドファンディングがスタート!












