今と同じことを10年やってたら、10年先はそれじゃ無理な気がする
――井上先生のマンガに対する情熱は、どこから湧き出てきているのですか?
井上 創意工夫が好きなんだよね、基本的に。逆に同じことをずっと続けるのが苦手。連載だって3年もやれば十分だなと思ってしまう。だからいつも長くなると、「やめよう、やめよう」って言いはじめちゃうんですよね。『夜王』は7年も連載が続いたんですけど、もう2年目あたりから、やめようと言っていた気がします (笑)。
今と同じことを10年やってたら、10年先はそれじゃ無理な気がするんです。今から10年後のことを考えると、ステップアップなりバージョンアップなりをしていかないとって考えます。僕らの世界では、魅力がなくなることを「枯れる」って言うんですけど、新しいものに気持ちを乗せていかないと枯れてしまうと思うんです。それはなるべく避けたていきたい。
――「枯れる」のはどんな時に感じるものなのでしょうか?
井上 自分自身の絵はあんまりわからないけど、他の作家さんの絵で、ピーク時と比べて、描いてる本人だって見たらわかるだろうぐらいの変わってしまった絵を見た時ですかね……。最近は、偲ぶ会に出ることが増えてきました。気づいたら周りにいる人たちが、編集にしたって漫画家にしたって、じいさんばっかりなんですよね。それで、「若い人はこんなじいさんと仕事したいかな?」ってふと疑問に思うわけですよ。僕は若い人と組んだほうが楽しいし、刺激的な気持ちになります。マンガ自体がそういうメディアじゃないですか。僕は若い人にじいさんと思われるのも嫌だし、常にバージョンアップしていきたいんですよ。
――なるほどです。そういう若い方と組んで、今描いてみたいジャンルはありますか?
井上 「アクション」描きたいですね。僕は1978年にデビューしたんですが、当時は漫画はラブコメ全盛期だったんですよ。あだち充先生の『タッチ』や、柳沢きみお先生の『翔んだカップル』とか。世の中のマンガの90%くらいの漫画がラブコメ。そういう時代があったんです。そこに風穴をあけたのが『北斗の拳』なんですよ。あれから「アクション」にピッと光が差したんですよね。
原哲夫先生も僕とそんなに歳は変わんないんだけど、あの作品で「お~!これだよ!」って感じが当時しました。今だと、わりと草食系のマンガが多いというか、原作を書いている人とも、今求められているシナリオも、ガッツリした「アクション」の代わりに、「ホラー」が流行ってるよねと話すんです。だからシナリオの方もそういうジャンルのものばかり望まれるから、「バリバリのアクションが書きたいんだよね」なんて聞くと、「そっち書きましょうよ!」って(笑)。僕が「アクション」を描くのが得意ということもあるけど、どこが当たるかはやってみなきゃわからないじゃないですか。『北斗の拳』のときのようなことが、いつか絶対来ると思っています。あきらめるのはまだ早い!
――先生の作品は主人公が凛としてて、エネルギッシュでかっこいいですよね。現在、「月刊ヒーローズ」で連載中の『BABEL』の“航太”は一見頼りないかなって思うんですけど、あることをきっかけに変わっていく姿がなんとも……!
井上 まあ、別にああいうのでもいいし、“尾崎”というキャラクターもいるんだけど、あっちだけでもいいような気もするんだよね。つまり、そのかっこよさにもいろいろバリエーションがあるから、その望まれた主人公を描けるように、さまざまな幅のキャラクターを描けるようにしておくことも、僕の仕事です。
キャラクターは描いていて、男も女もまだまだ、もっとなんとかなるような気がするから、描いていて楽しいし、やめられないです。そこがパワーに変わってくるというか、これくらいしか描けないと思っちゃうと、絵が枯れていっちゃうんですよ。もう少し工夫したらもっと良くなるんじゃないかといつも考えます。週刊誌の場合は相当ペースを飛ばして描いていましたけど、今は8割くらいまでは納得いくように描けるようになりました。だから、あと2割はまだこれからもっとうまく描けるんじゃないかって思うんです。
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