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「常に更新しつづけていきたい」。マンガ家・井上紀良先生のマンガへの飽くなき挑戦
2016年11月7日


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柔軟に時代に順応して、作品が残ればいい

――井上先生にとって、今の電子書籍業界・市場は、出版業界の中でどのような変化があったとお考えですか?

井上 今は売れる作家と、売れない作家の格差が激しい気がします。さらに作品でもバラつきがある。同じ作家が描いていても、ものすごく売れる作品とあまり売れない作品があるんですよね。こればっかりは、どの作家だって何が売れるのかわからないですよね。そうはいっても、読者という相手がいることなので、こちらが120%の力で挑んで、思ったようにヒットすれば「やった!」と思うし。はずれても次のステップで、また探せればいいとそれを繰り返してやってる感じです。

今の時代の流れで考えてみても、紙から電子への移行は避けられないんだろうなと思います。電車に乗っていても、みんなスマホばっかり。10年くらい前は、まだ電車で本を読んでる人いたかもわかんないって感じでしたけど、その昔ほど本を読んでる人を見かけなくなりましたよね。

――中には、ずっと自分は紙媒体でやってきたから、電子に抵抗を持っていて、なかなか馴染めないという作家さんも多くいらっしゃるんですけど、井上先生は……。

井上 逆に僕は、電子でしか読む人がいないんだったら、それに切り替えた方がいいと思っています。たしかに紙に印刷した方が好きだから、紙のものをよく買っています。でも、それは読みたい人の自由。僕らは提供する方なんだから、たくさんの読者がいるところで作品を提供するのが、プロであるなら筋だと思っています。

そういうふうに柔軟に時代に順応して、作品が残ればいいなって感じで、もうそのへんの分岐点にきているからね。いつまでも同じやり方の人はふるいに落とされている。僕も本当にもう、今ひっくり返ってて片足だけがちょっと引っかかってぶら下がってるだけって感じだから(笑)。

――電子書籍や電子コミックは、スマホだけあれば、どこでも誰でも読めますし、そういった意味でよりたくさんの読者がいるということですね。

井上 そうだよね。問題は描くときのクオリティだよね。タブレットはだんだん大きくなってて、画面の密度が上がっていくから、それに合わせて描けるのかどうか。前までは携帯画面の大きさでよかったからどんなに描き込んだりしても意味がないっていう感じだったけど、今は違います。あとは色も、基本的には白黒だけど、途中でパッとカラーになると、新鮮でまた面白いですよね。絶えずいろいろな方法を模索していく、工夫が描いていると本当に面白いんですよ。読者を楽しませたいという気持ちだけがあれば、この仕事はいいですよ。それが全てだと僕は思いますね。

また、たしかにプリントアウトするとそこそこ思ったようにはなってるんだけど、ちょっと満足感というか、やっぱりアナログの感じは違うなとは思いますね。

――デジタルとアナログは、ひとつ別物として棲み分けされつつあると思います。特に電子コミックは、紙で売られて、絶版になっていたものが、デジタルで復刻して配信されると、ものすごい反響があったりします。

井上 ですよね。この間、集英社の「少年ジャンプ+」の人に聞いた話なんだけど、今って読者が何ページまで読んでるか、完読したのか、途中で読まなくなったとか、何ページで読まなくなったというのが全部わかるそうなんですよ。工夫することが好きだから、デジタルのこういう、考える人によって進化していくところが、本当に面白いと思っています。

――井上先生は、電子コミックで作品を読んだりしますか?

井上 電子コミックよりも、やっぱ紙の方が多いですね。絵を見るから、やっぱり紙のほうが……。そうね、なぜかしら紙を見ます(笑)。

やはり古いタイプなんですよ。だから紙で描いてある方が、デジタルでみるよりも僕には影響力があるというか。カラーやなんかのイラストも、デジタルとアナログで同じものでも、アナログの一枚でプリントされているものを見る方が、「おおっ」と思っちゃうわけですよね。僕が生まれた時代がアナログだったから、仕方がないよ。でも生まれたときからデジタルに馴染んでる人は、逆かもしれませんよね。

――最近読んだオススメのコミックがありましたら、教えていただきたいです。

井上 コミックスだったら森秀樹先生の作品です。やっぱり『子連れ狼』だね! 『子連れ狼』か『新・子連れ狼』という作品の絵が決定的にいい。あとは「ビックコミック」でやってた『天駆』。これも絵がやっぱりうまいんですよ。

あと、平田弘史先生が好きですね。その先生も森さんも時代劇だけど。時代劇以外であれば、池上遼一さんが好きです。池上さんの絵は、1976~77年あたりが一番好きかな。

井上紀良(いのうえ・よしのり)
1959年、滋賀県生まれ。日本のマンガ家。中学を卒業後、友禅の図案を描こうと京都の友禅会社に入社。10年たたないと一人前にはなれないということをきき、かねてからの夢だった漫画家を目指す。高知県に渡り、青柳裕介、間宮聖士のアシスタントを経験。1978年、「週刊少年キング」(少年画報社)に「パイナップル・ジョー」で本格デビュー。その後、ヤングジャンプ・第4回青年漫画大賞にて「エンジェルス」が入選した。主な代表作に『マッド★ブル34』(原作・小池一夫)、『X(クロス)』(原作・梶研吾)、『夜王』(原作・倉科遼)などがある。現在、「月刊ヒーローズ」(ヒーローズ)にて『BABEL』(原作・木下半太)を連載中。

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