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【漫画家 堀尾省太が語る、新刊『ゴールデンゴールド』への想い 作者 堀尾省太先生インタビュー】
2017年6月5日


“奇才”と呼ばれる作家は数多(あまた)いるが、今回インタビューした堀尾省太は中でも特異な存在と言えるだろう。1996年に『磯助』でアフタヌーン四季賞大賞を受賞し作家デビューを飾り、2008年~2014年にかけて『刻刻(こっこく)』をモーニングTWOにて連載。読者からは「センセーショナルな作品」と言わしめ、漫画界のニューカマーとして一躍名を轟かせる。
そして、新連載となる『ゴールデンゴールド』では、マンガ大賞2017にノミネートされるなど注目を集めている話題作だ。

電子書籍ランキング.com編集部では、話題作『ゴールデンゴールド』の作者堀尾省太氏にインタビューをした。氏の独自の世界観を描くルーツや想いから今後のストーリー展開など、漫画ファン垂涎必至の内容となっている。

ゴールデン・ゴールド

時間が止まる、お金が増えるという多くの方の夢みたいなものをテーマにしている

—————–前作の『刻刻』、最新作の『ゴールデンゴールド』ともに堀尾先生独自の世界観が表れています。漫画を描くにあたってのルーツやお考えを教えていただけますか。

堀尾省太(以下、堀尾) 『刻刻』、『ゴールデンゴールド』ともに、時間が止まる、お金が増えるという多くの方の夢みたいなものをテーマにしているので、特別なルーツはありません。

——————————堀尾先生は『土竜の唄』作者高橋のぼる先生、『月下の棋士』作者能條純一先生のアシスタントをされていましたが、それぞれの先生方から影響を受けた点を教えて頂けますか。

堀尾 能條先生のコマ使いは参考にさせて頂いています。具体的には、背景のみのイラストに大きなコマを使う点や、アクションシーンを瞬間的な表現で描いている点です。アシスタント当時は、1コマに半日から1日費やすこともしばしばあったので、ただ読むだけの状態と比べて自然と影響を受けました。

——————————-実際の作品ではどのように描かれていますか?

堀尾 言語化するのは難しいのですが一つに、より臨場感を出すことができます。
例えば、『ゴールデンゴールド』の1巻のシーンです。左はフェリーの乗船客から見た構図ですが、この図を入れることで漫画に読者を移入させることを狙っています。
一方、右の4コマは完全に能條先生の影響です。遠くに見えていた新幹線がアップになり車内を描くことによって、新幹線に乗ったという現在進行形の様子を表している流れです。特に3コマ目の効果音が「ゴッ」と切れているところは、自分でも影響を受けているなあと思います。
もう一つ影響があるとしたら俯瞰の構図、上から見た構図を必要以上に使わないことです。場にいる人間の視点や、シーンを近くで見ているカメラの視点で描くことも先生から影響を受けました。基本的には、俯瞰図は全体の把握や認識を読者に提供する効果がある一方で、臨場感が弱まる気がします。先生は、とにかく寄りと引きの差が凄く激しく、寄る時は、真似できないくらいに大胆な寄り方をされています。

田渕(編集担当) 能條先生や堀尾先生はコマの中の時間がコンマ1秒以内でないと許せないんですね。アメコミなんかだと1コマの中の時間が長くて、会話の受け答えを2周くらいしていたりしますが、その逆です。『ゴールデンゴールド』の先ほどのコマ運びも刹那的な状況を演出しています。

ゴールデン・ゴールド(2)

(左 : 『ゴールデンゴールド』 1巻 P.18)
(右 : 『ゴールデンゴールド』 1巻 P.172)

——————一方、高橋のぼる先生についてはいかがでしょうか?

堀尾 女の子のキャラにギャグ担当をやらせているシーンでは、先生は思い切った事をされます。
例えば主人公の女の子に男のキャラが接近してきたとき、女の子は「この人は、絶対に変質者だ」と決めつけます。そして「自分が可愛いから接近している」と思い込み、男を幻滅させようとするシーンがあります。先生は女の子に雑草をむしって食べさせてしまうのですが、奇想天外なことを成立させているので勉強になりました。

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