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インタビュー企画第3回
電子書籍で出版された『架空の歴史ノート』の著者、設楽陸氏
2016年4月29日


『架空の歴史ノート』という電子書籍を、知っているだろうか?
これは、2013年5月に「帝国史 分裂大戦編」をはじめ、全8冊にわたり出版されている設楽陸氏の制作した作品である。
どこにでもある大学ノートに、落書きのようなタッチで描かれている。某テレビ番組では「中二病が全開」な作品と紹介され、話題を呼んでいた。しかし本作品の最大の魅力は、思わず懐かしい気持ちになれるところだろう。子どもの頃の思い出とどこか重ねてしまう内容に共感しながら、彼の描く架空の「帝国」の物語や、奇想の世界観に、あなたもきっとのめり込んでしまうはず。
インタビュー企画第3回は、設楽氏にメールインタビューを敢行。『架空の歴史ノート』のルーツや、電子書籍を出すに至るまでの出版秘話などをお届けします!

まずスキャンが大変でした! 美術館のパソコンやコピー機などを使って、スタッフの人とその膨大な量をひたすらスキャン

―『架空の歴史ノート』を電子書籍で出版しようと思ったきっかけを教えてください。

2008年に愛知県の美術大学を卒業して、それから展覧会などで絵や架空の歴史ノートを発表していました。2012年に名古屋市美術館で「ポジション2012」という大きな展覧会があり、大々的に架空の歴史ノートを展示したらけっこう反響があって。そしたらいろいろな方に「今は電子書籍という誰でもデジタルで本を出版できる媒体があるからやってみたら」と言われました。ちょうど展覧会の閲覧用で複製本をつくるのにノートをスキャンして大量に画像を保存していたので、「ちょうどいいからやってみようかな」とボヤッと思ったのがきっかけです。

 

―「ノート」を電子書籍化するという、前代未聞の計画を達成するために、困難だったことがあればお聞かせ下さい。

まずスキャンが大変でした! 今全部でノートが16冊あり、とりあえず8冊スキャンしたのですが、1000ページにも及びました。美術館のパソコンやコピー機などを使って、スタッフの人とその膨大な量をひたすらスキャンしていて、同時に製本作業や展示用の絵画も描いていたのでまさに地獄でした。スキャン地獄です。なので開催まで全冊スキャンは無理でした。でも、この展覧会の時期とタイミングとスキャン作業がなかったら電子化しようとは思わなかったと思います。基本的に面倒くさがりなので。

電子書籍化のやり方も分からず、2日間で4万円のあんまり意味の無い講座にも参加していました。3個くらいの電子出版サイトを経て、2012年に始まったばかりのキンドルに落ち着いた感じです。まだAmazonのKindleも始まったばっかりで情報もないし、ノウハウもありませんでした。そこで、ネットで良心的な価格の電子出版代行サービスを探して、レベルライフという会社に代行出版してもらい、電子書籍化に至りました。

 

―電子書籍を出版するにあたり、資金を集めたと伺っておりますが、苦労したことや大変だったことを教えてください。

それは、電子出版した後にレベルライフと、次の展開として紙やグラフィックノベルでの出版のためにキャンプファイヤーで資金を集めようということになったときのことですね。
結局、資金は集まらなかったですね、ちょっと時期尚早すぎたのとマニアックすぎたのかもしれません(笑)。

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―電子書籍を出版したことによる反響などはいかがでしたか?

はい、Kindleで電子出版して1か月経ったくらいのときに、ツイッターで「Kindleで全て手書きの黒歴史ノートが発見される!」という記事が友達から回ってきて「これおまえじゃね?」て。「これ俺だわ!」みたいな感じで初めて話題になってると知りました。そこからいろいろ取材が入り始め、朝日新聞のウェブサイトニュースで大きく取り上げられました。その影響もあり、AmazonのKindle地理歴史部門で1位(あのノートが地理歴史部門なのかは謎ですが)、総合ランキングで3位にランクインしました。それがさらに話題になりマツコデラックスさんと矢部浩之さんがレギュラー出演しているフジテレビの「アウト×デラックス」という番組に「手書きの落書きノートで生活しようとしている男」として出演し、アウトな人間としての称号を得ました。実際にはノートで生活は全然できていませんが(笑)。

僕はめんどくさがりなのですが、一度走り出し取り組み始めると止まらないタチなので、とりあえずスキャンしていたし、「Kindleで電子書籍化だ!」という単純なゴールを設定してやっていたので、その先どうなるかとか戦略とかは考えもしませんでした。なので、これほど大きな反響があったことに驚きました。単純にノートをスキャンしただけの感覚でしたから。

 

>次ページ「ノートに妄想の世界設定のゲームを書いては独り遊びしていたのが、今の『架空の歴史ノート』のルーツ」



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