スタジオジブリの宮﨑駿監督がアニメーション映画として大ヒットさせ、蜷川幸雄氏によりミュージカル化もされた『魔女の宅急便』が約20年ぶりに上演されている。『魔女の宅急便』は、1982年から2009年の27年に渡り児童文学作家の角野栄子氏が執筆した全6巻の児童書で、アニメーション映画も実写映画もミュージカルもこの本を原作として始まっている。
今回のミュージカルで主人公のキキを演じる上白石萌歌さんに、今まさに読んでいる途中という原作の感想やキキとの共通点、そして今舞台にかける意気込みを伺った。
キキは私と共通している部分が多い
―― 今回「魔女の宅急便」が日本でミュージカルとして上演されるのは約20年ぶりですが、出演が決まったときの心境はいかがでしたか。
上白石萌歌(以下、上白石):まったく実感がなくて、本当に驚きました。実は今日初めてこの衣装を着たのですが、「あっ、キキなんだ」っていう実感がやっと湧いた感じです。
ただキキや物語のイメージは、多くの方の中で出来上がっていると思うので、不安はあります。
―― 『魔女の宅急便』は宮﨑駿監督のアニメ映画としては有名ですが、原作となる児童書があったことはご存知でしたか?
上白石 ジブリのアニメ映画は知っていたのですが、原作の本があることは知りませんでした。少し前に原作を購入して、今、読んでいるところです。まさか6巻まであるとは知りませんでした。
―― 今まさに原作を読まれてるということですが、読んでいて一番印象に残っているエピソードはありますか?
上白石 キキの魔法が弱くなってホウキで空を飛べなくなってしまうシーンがあるのですが、この苦しみがキキを襲った時には、私も読んでいて、「キキはどうなっちゃうんだろう」って胸騒ぎがしました。でもそこからキキが立ち上がっていく部分では、キキの粘り強さをすごく感じました。なので、キキが大人になるためにどんどん試練を乗り越えていくところがすごく心に残っています。
―― 上白石さんは今回主人公のキキを演じられます。キキは空を飛べること以外は本当に普通の女の子に見えますが、上白石さんからみたキキはどのように見えますか?
上白石 キキは、すごくお転婆な女の子だと思います。旅立つ前に新しいホウキで行こうとして、お母さんに「古いのがいいから持って行きなさい」と言われても、「私はこれがいい!」って言う部分とか(笑)。そういう部分が可愛らしいなって思います。
私もわりと思い立ったらすぐ行動しちゃうので、休みの日は家にいず、「あっ!あそこ行こう!」って、1人でぷらーっと出かけたりします。キキは最初、コリコの町に馴染めないんですが、私も割と人見知りをしてしまう方なので、読んでいて、「わかる!」ってなりました。そういう部分は私と共通している点が多いので、基本的には自分の気持ちのまま等身大で演じられるんじゃないかと思います。
―― キキとの共通点をお伺いしましたが、逆にここが違うなと感じる部分はありますか?
上白石 空を飛べるところですかね。純粋に羨ましいなって思いますね(笑)。ジブリアニメの映画版で一番好きなシーンが、旅立ってすぐ、ホウキに乗って夜の町を見下ろすシーンなんですけど、そこでラジオから松任谷由実さんの『ルージュの伝言』が流れているんですが、どんな気持ちなんだろうって想像しました。
撮影でホウキにまたがったんですが、またがっているだけでも内ももが痛くなってきて、きっと体力も必要なんだなって思いました(笑)。キキは魔女だから優雅に飛べるんだろうし……と想像すると、空を飛べるっていいなって思いました。
―― 上白石さんご自身も日頃から空を飛びたいなと思っている(笑)。
上白石 はい、いつも思ってます(笑)それがこの舞台で叶いそうなので、楽しみです。舞台ではワイヤーを使ったフライングだったり、プロジェクションマッピングを使ったりするのですが、舞台上で空を飛んでいるシーンをどう表現されるのかも、楽しみにしていただきたいですね。