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『劇場版 はいからさんが通る』公開直前!大和和紀先生が語る『はいからさんが通る』制作秘話とその魅力
2017年11月10日


紅緒は主人公を壊しても読者はついてくるはずという、私の中の実験

⑨はいからさんが通る3
コミックス「はいからさんが通る」のヒロイン・花村紅緒   (C)大和和紀『はいからさんが通る』/講談社

―― 原作『はいからさんが通る』のお話に移りたいと思います。大和先生は、『はいからさんが通る』を描くよりも前に『ラブパック』、そして同時期に『レディーミツコ』など歴史コミック作品を出しています。先生ご自身、少女漫画で歴史を舞台に扱おうと思ったきっかけを教えてください。

大和:特にこれといったきっかけはないのですが、元々、歴史が好きだったんです。私たちの世代は、東映の時代劇や大河ドラマを子供の頃から好んでいました。それらに触れていたおかげで近いものとなっていたためかもしれませんね。現代ものはその時のトレンドを取り入れるため、時が経つと古さを感じてしまいます。しかし、歴史ものは、過去を描くのでいつまで経ってもネタが古くならないという長所もあります。
私の作品では、『はいからさんが通る』は大正時代、『レディーミツコ』、『ヨコハマ物語』、『N.Y.小町』は明治時代を描いています。この4作品は近代ものですね。

―― 『はいからさんが通る』で大正時代を舞台に描こうと考えたきっかけはなんでしょうか。

大和:大正時代は近代化の波とともに、徐々に軍国主義や戦争へ向かって行くという少し暗い時代だったようですね。作品ではそんな社会状況の中で明るく生きている女性を描きたいなと思いました。
あとは、やっぱりファッションですね。『はいからさんが通る』では、えび茶色の袴が描きたくて編集部を説き伏せました。それまでの女性ファッションにはなかった、着物に袴姿と、西洋風のブーツを合わせる姿に惹かれました。
ファッションでいうと明治、大正ともに袴は穿いていましたが、明治では足元は草履や下駄なんですよ。で、髪もまだ日本髪でした。しかし、昭和までいってしまうと今度は完全に洋装に移行している。ちょうど和装から洋装への移行期が大正時代なんです。そんな大正時代の格好も大半の日本人はしておらず、ごく都会の最先端の人達がしていた格好なんですけど。
社会的にみても、大正時代は女性の社会進出の気運が高まり、女性の価値観を考え直し始めた時代でもあります。それで、紅緒や環が出版社や新聞社で働いても自然な時代というのもありました。
大正時代はドラマチックな時代です。日本は、服装や女性に対する価値観の変化だけでなく、戦争や地震など社会生活の変化を余儀なくされました。そういった社会情勢と恋愛要素を絡めた作品が『はいからさんが通る』という作品なんです。

―― 『はいからさんが通る』の主人公紅緒は、酒乱だったり剣道に秀でていたり、キャラクターがたっていますよね。

大和:主人公がお転婆という設定は、当時少女漫画界でも結構ありました。ただ、ここまで壊した漫画はなかったと思います。普通とは違うヒロインを描きたかったというのがありました。

―― 新しいヒロインを作ってみたいというのは……。

大和:それは、しっかりと王道をふまえたストーリーを描けば、逆にギャグで壊しても絶対に読者はついてくるはずという、私の実験というか挑戦です。それは読者がシリアス部分と強烈なギャグの落差を新鮮とうけとめてくれたのでしょう。

―― 『はいからさんが通る』での実験は上手く証明されて、『ヨコハマ物語』や『N.Y.小町』の主人公にも引き継がれていったということでしょうか。

大和:いえいえ、あちらはギャグなどなく、シリアスです。あちらは、『はいからさんが通る』の骨子部分である女性の一代記を描いて欲しいという要望から生まれた作品です。

―― ちなみに主人公の紅緒が酒乱という設定を考えたきっかけはあるのでしょうか?

大和:『はいからさんが通る』の担当さんが「俺、酒乱なんです!」って。例えば宴会の場では暴れるほどだったそうです(笑)。その担当さんのお酒につき合っているうちに私も飲むようになりました。あとは、今も当時も「酒乱」はあまり使われていない死語だったこともあり、新鮮に聞こえたので主人公の設定にしようと考えました。
当時は、担当さんもアシスタントさんも酒飲みが多く、その方たちとお酒を飲んで笑って騒いでストレスの発散をしていました(笑)。

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