キャラクターが勝手に動く

―― 『さよなら、田中さん』のエピソードは、小学生ならではのエピソードが多く散りばめられています。実際にるりかさんが体験したエピソードなどはあるのでしょうか。
鈴木:例えば「Dランドは遠い」で、花実ちゃんが自販機の下の釣銭を漁っているシーンがありますが、あれは実際に、私の学校で流行っていた事でした。
クラス内で「あそこの自販機の下にはお金が落ちている。」みたいな話で当時は盛り上がっていました。
―― やはり、そういった自分で起きた出来事なども書かれているんですね。
主人公の花実ちゃんのお家は母子家庭という設定ですが、どのように思いついたのでしょうか。
鈴木:ちゃんとしたモデルはいませんが、近所に引っ越してきた母子家庭の親子がいて、母と娘の二人暮らしという設定だけお借りしました。
2つ年上の子だったのですが、新鮮というかどういった生活なんだろうと考えるきっかけになり、お母さんと2人の生活を想像しながら、話を作りました。
―― その他ですと中学受験の話も出てきますが、中学受験をする子は周りでもいましたか。
鈴木:いましたね。物語のように誰がどこの学校に行くみたいなどの話もクラス内ではたまにありました。
―― やはりそうなんですね。このストーリーはどのように決めていったのでしょうか。
鈴木:まずは設定を考えます。そこからキャラクターたちがストーリーを作り上げていく感じです。
設定は想像だったり、見たり聞いたりしたなかで気になった物事を参考にしています。
そこからキャラクターが勝手に動いてストーリーができていく感じです。この感覚は初めて書いた日からありました。
―― 「キャラクターが動く」というのは、多くの著名作家さんのようですね。
鈴木:何か引っかかるモノは割りと細かく覚えたりしています。
例えば「いつかどこかで」の中に「食器棚の奥の骸骨」(※)ということわざが出てくるのですが、これは小さい頃にお母さんと一緒に観た海外ドラマの中に出てきたセリフです。
お母さんも忘れているし、私もその他のストーリーは忘れているんですが、この言葉は印象的でどのように使われたかなども覚えています。
※元々は「a skeleton in the closet」というアメリカのことわざで、意味は「世間に知られては困る家庭内の秘密」。
―― 主人公の花実ちゃんですが、小学校6年生にしては凄くお母さん思いでしっかりと芯を持った女の子の印象を受けます。
このモデルの子はいたりするんでしょうか。
鈴木:特にいませんが、私の理想の姿を描きました。
足りていない部分はありますが、私はここまでお母さん思いでもないですし。
共通点は、あまり他人の悪口を言わないところと本を読むことが好きなことです。
― この作品の1編から4編は、花実ちゃんが主人公ですが、最後の「さよなら、田中さん」だけは、同じクラスの男の子が主人公です。この作品のみ花実ちゃんを客観視する設定になった経緯があれば教えてください。
鈴木:この作品を書く時に、担当の編集さんから「別の人の視点から観た花実ちゃんを書いてみたら」と提案されたので書いてみました。
元々、男の子を主人公にした物語も書きたいと思っていたこともあって、男の子を主人公にしました。
―― 『さよなら、田中さん』を読んでもらってどんなことを感じて貰いたいですか。
鈴木:読み終えた後に、希望を感じて欲しいなと思っています。元々、私が読んでいる作品も希望を感じられる作品が多いので、自分で書くものもそうしたいなぁと。
あと、おじいちゃんに教わった「どんなときも道はある。絶望的な状況でも光はある。」という言葉が大好きで、それも理由の一つです。
ですので、読んでいて希望を感じるというか元気になってもらえる作品になればといいなと思います。
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