「あいやぁ、おらの頭このごろ、なんぼがおがしくなってきたんでねえべが」
訛りの強い遠野弁の一節から始まるこの作品は、今年1月に発表された、第158回芥川賞受賞作『おらおらでひとりいぐも』。著者・若竹千佐子さんは63歳にして芥川賞に輝き、史上2番目の高齢受賞者となりました。
著者が織りなす折々の言葉は、読者の心をわしづかみにしました。先月9日には、遂に50万部を突破。
半世紀を経て、念願の”作家デビュー”を果たした、著者・若竹千佐子(わかたけ・ちさこ)さん。
なぜ、この作品はベストセラー成り得たのか。どのような思いで執筆していたのか。
電子書籍ランキング.comは、『おらおらでひとりいぐも』著者・若竹千佐子さんにお話をお伺いしました。
「これはベストセラーになるよ」と仰って下さいました。
― 芥川賞受賞おめでとうございます。周囲の方の反応はいかかですか?
若竹千佐子(以下、若竹):予想以上の反応です。読者の方からは、ずっと家に置いておきたい本だと言っていただきました。私と同世代の方なら、共感をされるというのは分かるんです。しかし、それ以外の方、特に30代や40代の方に共感して頂けたのはびっくりです。作品を好意的に読んで下さるのは、嬉しいですね。
芥川賞を受賞した後は、『おらおらでひとりいぐも』(以下、『おらおら』)を知っている人が格段に増えたと感じました。周囲からの扱いもこれまでと違っているような気もしました(笑)。近所の方に挨拶されたり、長らく会っていない知人から自宅に電話が掛かってきたり。本当に芥川賞は凄いなあって(笑)。
― メディアへの露出も増え始めていますよね。初めてのメディア出演は、『久米宏 ラジオなんですけど』(TBSラジオ)だったそうですね。
若竹:久米さんが初めてでした。
担当編集:『おらおら』が発売されて間もない11月24日の久米さんのラジオが、初めてのメディア出演です。
― その後芥川賞を受賞し、先日2月9日には、『おらおら』は50万部突破しました。「50万部」と聞いて、どのような思いですか?
若竹:本当にびっくりですよね。「50万部」という数字にはあまり実感が湧きません。
― 母親に読んでほしいと思って買った方や、ご家族やご親戚に読んでほしいと思って、複数冊買った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
若竹:昨年末まで受講していた小説講座の先生が「これはベストセラーになるよ」と仰って下さいました。「10万部超えると出版社でも見当がつかなくなるよ」と。本当にそのとおりになりました。
先生はもちろん、一緒に受講した同期たちからも受賞の祝福を受けました。芥川賞の贈呈式には彼らも来てくれることになっているんです(取材日は2月19日)。