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「本づくりに触れ合う中で、本を読む機会を増やしてくれたら」 講談社・「本づくりプロジェクト」発案者の意気
2018年3月30日


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本を作ることはすごく楽しいから、その楽しさをみんな知ってほしいという感覚
 
― 第一弾の『集団探偵』を電子書籍で先行配信した理由を教えてください。
 
担当:紙書籍が発売される今月23日まで、電子書籍は500円で配信していました。電子書籍と紙書籍を同発にしなかった理由は、2つあります。
まずは、話題を途切れさせてはいけないと思ったから。もう1つは、読者が装幀を募集していたと締め切り後に知った場合、すぐに読めないのはおかしいと思うからです。今、すでに決定した装幀イラストをホームページで公開しています。このページをたまたま目にした人が、読みたくても読めない状況は避けたかったんです。ただ、無料配信するのも気が引けるので、期間限定価格のワンコイン価格で配信しようと考えました。
 
『集団探偵』を紙書籍で手にする人は、装幀を募集していたとを知らない方がほとんどでしょう。SNSをあまり利用しない方やネット書店ではなくリアル書店によく行く方が、『集団探偵』を予備知識なく「良いな」と思って手にしてくれたら嬉しいです。
余談ですが、中身の銀杏のイラストはデザイナーの池田進吾さんの手書きです。『集団探偵』の舞台は、銀杏の木の近くに建っているシェアハウスなので、それをモチーフにしています。
 
― この装幀は古いようで新しい印象を受けます。
 
担当:そうなんですよね。応募してくれたイラストには、今風な作品も数多くありました。しかし、作品の内容とズレているものも多かった。ここが本づくりの難しいところです。ど派手で現代的な装幀で『集団探偵』が売れたとても、ノスタルジーを感じさせる作品内容に対して嘘をついていることになりますし、次作は売れないでしょう。装幀や帯、キャッチコピーと内容がチグハグだと、その本だけは売れるかもしれませんが、以降は売れなくなると思います。つまり、作家をダメにしてしまいます。
 
― 「本づくりプロジェクト」や読者参加型企画をコミックやライトノベルなどに展開することはお考えですか?
 
担当:文庫本やライトノベルだと可能だと思います。この企画がうまくいき、紙書籍の売れ行きが良いとそういう風潮は起こり得ると思います。
とにかくゆっくり考えていては駄目だなと痛感しました。ひらめきとスピードを最優先にしないといけないと。この企画は、僕とデジタル局の営業担当、システム担当の3人で運用しています。とにかくフットワーク軽く、早く、思いついたらとりあえずやってみるという感じです。
 
― 他に同様の企画を考えているのでしょうか?
 
担当:デザインやあらすじ募集はどうでしょうか。講談社文庫の見返し部分は、ツイッターと同じ141文字なんです。その文字数であらすじを募集するのも面白い。新人作家のペンネームを募集するのも可能ですよね。
 
あと、電子書籍に限っては、一般的な単行本の分量に満たない作品の本づくりを一緒にやることも可能ですよね。100ページ未満の本でも良いわけです。もちろん電子書籍の短編カバーイラストに応募して採用されても、配信時のサムネイルが自身のイラストになるだけなので、嬉しさが小さい気もします。やはり紙の本にもして、書店に並ぶほうが良いのかなと。その方が、デビューした感覚はありますよね。あとは、小説誌の挿絵を募集することもできます。最近の小説誌はどの社も同じイラストレーターさんに依頼しているのでマンネリ化していて、そこで新人イラストレーターをどんどん送り込めれば、面白いと思いますね。
 
この企画をきっかけに本づくりの才能を発揮した方が、装幀イラストを描くようになって、イラストレーターや画家、写真家としてデビューしてくれたら一番嬉しいです。
 
― 現在、出版業界は厳しい状況です。先ほど仰ったほかにどのようにして本との接点を増やすことができるとお考えですか?
 
担当:立ち読みの機会を、電子書籍でも増やしたいなと思っています。立ち読みできる本は数十万冊あるので、今回のような企画やキャンペーンを機に「小説を試し読みしてみない?」と、提案して、読書が面白いと感じてもらえたらいいですね。
今は目的が無いと本が読まれなくなってきています。タイトルやキャッチコピーに応募するために小説を読んでもらえれば、それが読書習慣になると思います。本づくりに触れ合う中で、本を読む機会を増やしてくれたら嬉しいです。読書のハードルを下げるために、今回のプロジェクト対象作品は全て短編集だし、全て現代小説です。たくさんの人たちが立ち読みして、読書が嫌いにならないような本にしたいと思っています。
 
― これを機にプロジェクトの幅を広げていくのでしょうか?
 
担当:アイデアはあるので、もしかしたら続けていくかもしれません。出版業界には本が売れないからとにかく企画で目立たないと! というような暗い話がすごく多いんです。僕はもっと楽しくやろうよっていう感じですけどね(笑)。
本は売れないし、取り巻く環境がだんだんと苦しくなっているので、この状況をどうにかできる人を探している……というのが多い。でも、そうではなくて本を作ることはすごく楽しいから、その楽しさをみんなに知ってほしいという感覚に近い。
 
ゲームのシナリオやイラストを描いている方は大勢いらっしゃいますが、本もゲームやその他の一つとして考えてもらえたらいいなと思います。売れないから無理矢理目立たせたようというのではなくて、もしもその本があまり売れなかったとしても、このプロジェクトに応募した方々に楽しさを感じてもらいたい。僕たちも応募作品を見てアレコレ言う時間が楽しいです。僕らにとってもすごく楽しいプロジェクトなので、本を売りたい気持ちは二の次ぐらいに考えています。とにかく明るく、みんなで応募してほしいです。
 
― 本の接点をなるべく作ってあげるイメージでしょうか?
 
担当:そうですね。本を身近に感じてもらう。今年に入ってまだ本を1冊も読んでない人は、たくさんいると思うんです。そういう人が今回のプロジェクト対象作品を読んだり、本屋さんに一回でも行ってくれたりしてくれると嬉しい。この装幀募集に応募した人は、この結果を見に、本屋さんへ足を運んでいただけるとありがたいです。
 
― 先日、第二弾のタイトル応募は終了しました。現在は選考中なのでしょうか。
 
担当:応募された中から僕と作家さんで3案ずつ出し合って、決めているところです。これから、デザイナーさんにも意見を伺いながら決めていきます。デザインのしやすさなども重要な要素なので。集まったタイトルを眺めていると、僕らの難しい悩みを応募者も一緒になって悩んでくれたと感じられるので、とても面白かったですね。
 



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