本がどのように造られるかを知っている人は、どのくらいいるのだろうか?
上のYoutubeは、今回ピックアップする『本のエンドロール』がどのように本になっているかをまとめた「本のエンドロールができるまで」というドキュメンタリーだ。
『本のエンドロール』は、お仕事小説が主戦場の安藤祐介さんと講談社が行っている「本づくりプロジェクト」を発案した編集担当がタッグを組んで、印刷会社全面協力のもと、著者ですら知らないという本造りの裏側を徹底的に描いた作品となっている。
今、なぜこの本が生まれたのか?
印刷会社を含む出版業界では、今、何が起きているのか?
本造りの裏側から今後の本の在り方までを著者・安藤祐介さんに徹底的に語ってもらった。
本がどうやって作られているかは、作家も意外に知らない
―― 今回出版された『本のエンドロール』ですが、本の印刷会社を題材にした作品です。近年、『校閲ガール』、『重版出来!』、『書店ガール』など校閲部門から書店の現場まで出版業界全体を取り上げた作品が増えています。まずは、なぜ印刷会社を題材にしたのかをお伺いできればと思います。
安藤祐介(以下、安藤):いろいろ出ている中ではあるんですけれども、その中でも「印刷・製本」のほうにスポットを当てたものがなかったっていうのがひとつあります。
最初のきっかけは、編集さんから「本が実際どうやって作られているか、意外に作家さんは知らないんですよね。」と言われたことです。
この話を聞いた時に、原稿を出して校正し終わった後、どんなふうにして本ができているのかっていうのは、確かに知らないなと。なんとなくどこかで印刷して、どこかで製本して、本という形になるのは知っていましたが、原稿を出した後は本が完成するのを楽しみにしているだけっていう(笑)。
少し話をお伺いしただけで知らないことがいっぱいあったので、聞いているうちに「この話をもっと多くの人に知ってもらえたら面白いな」と思い、書きました。
―― 編集さんからの話を聞いて今回の作品を書いたということですが、これはどういった中で話題に上がったのでしょうか?
安藤:次の作品どうしましょうか、 みたいな話をしているときではありますが、最初から「これを書いて欲しい」という強い意図はありましたね(笑)。
話を聞いてみると面白かったので、その場で決めました。あと、取材先の豊国印刷さん(以下、豊国)が講談社さんと縁が深く、取材もガッツリできますよと言われたのも心強かったですね。
―― 確かに取材先を一から探さなくていいというのはありますね。本の中にも出てきますが、小さな印刷会社はどんどんなくなっています。その中で講談社さんの関連会社に豊国印刷さんがあったのは幸運ですね。
安藤:そうですね。もう本当に、いろいろ手取り足取り教えていただきました。最初は、護国寺にある豊国さんの本社からふじみ野にある工場と、暁印刷さんという別の印刷会社さんを見せていただき、最後は製本会社の国宝社さんまで一通り本の工程を見せていただきました。
その後も、豊国さんには何回もお伺いさせていただきました。
―― 謝辞の中で、3年ぐらいかかったという話が出てきていますが、取材にはどのくらいかけたのでしょうか。
安藤:そうですね。取材しながら書いたとこもあるのですが、取材から脱稿までで2年ぐらいかかっています。その後、1年ぐらいかけて直していました。
編集さんと最初から本の内容が少し長くなったり、詳しくなったとしても「本作りをしっかり書こう」という意図がはっきりしていたので、脱稿からの1年は細かい部分の取材と内容の取捨選択の連続でした。また、それだけだと「仕事と人間を書く」っていう部分が足りなくなってしまうので、そのバランスをいかに取るかというところで、1年ぐらいかかった感じです。