
作品をきっかけに考えたり、忘れないようにして欲しい
―― 役が決まってから撮影までに事前の準備などはやられたんでしょうか。
松本:犬を飼っているのですが、散歩に下駄を履くようにしています。すずさんは下駄を履いて全速力で走ったりするのですが、だいぶ慣れたこともあって思った以上に走れています。そこは活かされたかなと思います(笑)。
―― お裁縫や料理などはいかがでしょうか。
松本:お裁縫や包丁使いは、今まで全然やっていなかったんですが(笑)。撮影の前にちょっと練習したりはしました。ただ、すずさんもそんなに上手ではないので(笑)。なので、美術さんが用意してくださる小道具の野菜も結構、雑な切り方がされています(笑)。
―― 原作でも家の中の細かい部分まで描かれているという印象があるのですが、実際のセットではいかがでしょうか。
松本:台所を使ったシーンが多いのですが、狭くてモノを切る場所が無いので、床に正座して切ったりするんですけど、足がすごく痛くなります。なんでかわからないですけど床がトゲトゲになっていたりして、不便なところが多いなと。家の中ではないですけど、井戸までの道も整備されていないのでガタガタだったりするんです。でも、そういう不便さがお芝居をするうえでリアルなものを感じられて助かっています。
―― 家の中で特に好きな場所とかありますか。
松本:縁側です。ポスター撮影のときも縁側で撮影したですが、すごくいい場所だなって。義姉の黒村径子役の尾野真千子さんとは、「ここで寝たいね」という話をしました(笑)。ひとりでも誰かと過ごすのでも気持ちいいんです。縁側をあまり見かけなくなったというのもあって余計に愛おしく感じています。
―― 戦時中ということでモンペとか出てきますが、実際に着てみていかがでしょうか。
松本:当時の人は大変だったんだなぁとモンペを穿くたびに思います。ひもが前と後ろについていて、トイレとか行くたびに解いたりしなくちゃいけない。ひもも垂れちゃったりするので、これを毎日穿いていた当時の人は大変だっただろうなと思いますが、結構動きやすくて、過ごしやすい服が多いのでいいなと思うところもあります。でも、アッパッパなどは可愛いんですが、モンペを穿いているとオシャレにならなくて(笑)。当時の人ももっと可愛いものを着たかったんだろうなと思います。
―― モンペを作るのに着物を裁断して作るとかしていて、実際に原作でもそういうシーンがあります。
松本:実はそのシーンをもう撮ったんです。
―― 切る瞬間とかってどうでしたか。
松本:切る瞬間は撮ってないんですが……。でも、そのときは本当に、義姉に「冴えんっ!」て言われて(笑)。「作れ今すぐ」と言われて作っているので、「作れって言われたから、作んないと」という気持ちで、あまりもったいないとかネガティブなことは考えずに作ったと思います。

―― 夫の北条周作役の松坂桃李さんとは共演にあたって、話されていることなどはありますか。
松本:特に役の話はしていません。私が勝手に思っているんですけど、すずさんと周作さんは一緒に横にいるだけで、言葉を交わさなくてもなにかが通じ合っている二人なんだと思います。周作さんもあまり話すほうではなく、物静かな方なので。かといってすずさんもそんなに話さない。そんな二人なので、言葉を交わさなくても思いが一緒の二人なんだと思って、私はやっています(笑)。
―― 役のすずさんと周作さんがそんな感じだから、松坂さんともあまり話さない……。
松本:わかりあっている二人だから、この役をこうしようという話をしたことがないんだと思います。
―― 休憩時間などはいかがですか。
松本:松坂さんが年上なので、私の面白くない話をよく聞いてくれます(笑)。松坂さんが話すというより、私が話していることが多くて、お兄ちゃんみたいな感じです。
―― 松坂さんのほうが、経歴が長い分頼りにしている部分とかありますか。
松本:松坂さんがいてくださるのは本当に大きいです。体調とかも心配してくださって。周作さんもすずさんを支えてくれる旦那さんですが、松坂さんもすごく支えてくれて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
―― 今回は松本さんが出演されたNHKの連続テレビ小説『ひよっこ』からも宮本信子さんや伊藤沙莉さんが出演され、多くの朝ドラ経験者が出演されています。
松本:宮本さんも伊藤さんも『ひよっこ』でご一緒はしましたが、がっつり一緒のシーンはなかったんです。ただ、またこうやって違う作品でご一緒できるのは、すごく素敵なことだなと思います。また、『あまちゃん』が好きだった身としましては、宮本さんはもちろん、木野花さんや塩見三省さんとお芝居をさせてもらえることが単純に嬉しいです。
―― 現在、撮影の真っ最中かと思いますが、見どころなどはありますでしょうか。
松本:やっぱり、日常の部分です。今と変わらないような、ちょっと嬉しいことだったり、悩みだったり、そういうのを本当に丁寧に、あたたかく描いているドラマです。そのあたたかさが見どころかな、と思います。
―― 日常の中に戦争が入ってくるというお話をされていましたが、そういったことはどのようなことから感じられますか。
松本:伊藤沙莉さんが演じる刈谷幸子と土村芳さんが演じる堂本志野は、すずさんと仲がいいという設定なんですが、本当に女子トークをしている後ろに「砂糖の配給が8月から無くなる」と書いた貼り紙があったりするんです。普通に生活しているところに「ぜいたくは敵だ」とか貼られたりしても、あまり現実味がないじゃなですか。
―― 実際に戦場ではないから、現実として戦争を感じることは少ないですよね。
松本:演じていても、「本当に戦争をやっているのかなぁ」という感覚です。空襲にしても最初のうちは、警報が鳴るだけで実際はやってこないので、現実味が無いと思うんです。でも、だんだんそういったことを繰り返していくうちに、「戦争をやっているんだ」ということを実感していくんだと思います。
―― やはりそういったところを視聴者の方にも感じてもらいたい……。
松本:そうですね。「日常に入り込んでくる恐怖」というのを感じてもらえたら嬉しいですし。代用品でやりくりしているのを観て、モノの大切さを感じてもらえたら嬉しいですし。別にすずさんがこんな感じだから、大事にしてというわけではなくて、自分がこの作品に触れて感じたように、見てくださった方の少し考えるきかっけになれたら嬉しいなと思います。
―― この作品を通して、松本さんがどういったことを伝えたいとかありますか。
松本:やっぱり私たちの世代は、正直そんなに戦争のことを深く知らない方が多いと思います。「本当にこういう事が起こったんだ」ということをみんなが忘れてきている時代だなと思うので、この作品をきっかけに考えたり、忘れないで欲しいなと思います。
松本穂香(まつもと・ほのか)
1997年2月5日生まれ。大阪府出身。
2017年放送の連続テレビ小説「ひよっこ」で有村架純演じるみね子のトランジスタラジオ工場の同僚・青天目澄子を演じ注目を集める。
2018年6月には出演作「世界でいちばん長い写真」が公開。秋には台湾映画「あの頃、君を追いかけた」の同名リメイク作が封切られる。ドラマ「SPECサーガ完結篇『SICK’S 恕乃抄』~内閣情報調査室特務事項専従係事件簿~」が動画配信サービスParavi(パラビ)にて配信中。7月15日からは主演を務める連続ドラマ、TBS日曜劇場「この世界の片隅に」がスタートする。
Twitter:@matsuhonon
Instagram:@weekly_matsumoto
メディア情報
日曜劇場「この世界の片隅に」
累計120万部を突破した、こうの史代さんの名作コミック『この世界の片隅に』をTBS日曜劇場枠(毎週日曜21:00~)にてドラマ化。
太平洋戦争の最中、広島県の江波から呉に嫁いだヒロイン・すず(松本穂香)が、嫁ぎ先の北條家で、不安と戦いながらも懸命に生きる姿を描く。
共演は松坂桃李、二階堂ふみ、村上虹郎、宮本信子ほか。7月15日放送開始。
URL:http://www.tbs.co.jp/konoseka_tbs/
『この世界の片隅に』
作:こうの史代

<内容紹介>
平成の名作・ロングセラー「夕凪の街 桜の国」の第2弾ともいうべき本作。
戦中の広島県の軍都、呉を舞台にした家族ドラマ。
主人公、すずは広島市から呉へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑う。
しかし、一日一日を確かに健気に生きていく…。
















