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「テレビゲームを一生懸命やっていれば、褒め称えられる世界になってほしい」国内eスポーツの第一人者・筧誠一郎氏の想い
2018年8月30日


昨今、「eスポーツ」という言葉を耳にする機会が増えていますが、なぜ「テレビゲーム」が「eスポーツ」と呼ばれているのか疑問を持たれているかたも多いと思います。そのような疑問について、日本のeスポーツ第一人者である筧誠一郎さんにお話をお伺いしました。
 
電子書籍ランキング.comでは、今月新たに上梓された『eスポーツ論 ゲームが体育競技になる日』(ゴマブックス)の内容とともに、eスポーツの過去・現在・未来についてお話をお伺いしました。
 
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eスポーツで街が盛りあがるようにしていきたいと思っています

 
―筧さんは現在どのようなご活動をされていますか?
 
筧誠一郎(以下、筧):今は、eスポーツコミュニケーションズ合同会社の代表として、eスポーツの主催事業を行っています。主催事業は、大きく三つの柱がありまして、一つは「日本eスポーツリーグ」という、全国フランチャイズチームの総当たり戦による大会をやっています。これは全国47都道府県に地元チームを創ることを目指しています。Jリーグのeスポーツ版をやっていきたいなと思っています。
 
もう一つの事業としては「eスポーツスターリーグ」を主催しています。8月6日に第2回目を行いました。これは芸能事務所対抗です。4事務所対抗という形になっていて、ユークリッドさんや松竹芸能さん、アップフロントさん、グラチアさんなどに所属しているかたが競っています。これを年3回くらいやっていければいいなと思っています。
 
あと一つは「日本eスポーツ学生選手権」というものです。日本eスポーツ学生連盟という大学生を中心とした団体と共催しています。春休みや夏休みなどに、これまでに4年で計8回くらい行っています。今年からは11月もやりたいという話になって、年3回ペースで開催されるようになるかもしれません。全国約50の大学から、予選で300人くらいの規模で参加いただいています。この三つが主催事業です。
 
あとは全国各地からeスポーツイベントをやりたいという話があったときに、出張してイベントの開催を行っています。先日も勝浦市に行き、その後は千葉市、長崎市と全国を周るかたちです。
 
あとはプロデュース業です。一つはテレビ番組の監修や雑誌の制作の請負をしています。かつては『eスポーツMaX』(東京MX)、いまは『YUBIWAZA』(毎日放送)の番組を監修しています。今年9月くらいから始まるテレビ番組にも携わっています。雑誌は、『eスポーツマガジン』(白夜書房)の制作請負をやっています。これらの活動を中心に日本全国でeスポーツの啓発活動をしています。
 
―先ほど、「Jリーグのeスポーツ版をやっていきたい」と仰っていますが、現在全国にどのくらいのチームがあるのですか?
 
:全国に6チームあります。次シーズンが始まる10月から2チーム増える予定です。ほかにも「やりたいよ」というところが複数あるので、今後はそれらのかたがたもリーグに加わってほしいと思います。
 
―とくにeスポーツに力を入れている県や地方はありますか?
 
:トピックスでいえば、東京ヴェルディがeスポーツ部門を持ってくださったり、大阪にCYCLOPS(サイクロプス)アスリートゲーミングというチームがあるのですが、ここなどは完全給与制で合宿所に選手を住まわせるほど力を入れています。熊本の再春館製薬さんは、地元を盛りあげ、若者に夢を与えようということでやっています。
 
ほかのチームも地元でものすごく活発にイベントを行っていますし、いまとても盛りあがってきているなと感じます。10月のシーズンから参加する富山は、地元のコミュニティから始まって、プロチームを持つまでになっています。
 
―まさに地方創生の役割があるんですね。
 
:そうですね。Jリーグが発足してから、それまで鹿島神宮だけが目玉だった鹿嶋市がサッカーを一産業として盛りあげたみたいに、eスポーツで街が盛りあがるようにしていきたいと思っています。
 
―各地での盛りあがりはいつごろから活発になったのでしょうか?
 
:去年から今年にかけてですね。そのころからオリンピックや国体などのワードが出てきたおかげで、一気に身近になったのだろうと思います。eスポーツリーグに参加する既存の8チームにもそれぞれの地域のスポンサーがつき始めており、これから、どんどん広がりをみせていく気がします。
 
―サッカーのチャンピオンシップや高校野球の甲子園大会のように、盛りあがりさえすれば、eスポーツは違った見えかたがするのかなと思います。
 
:eスポーツはインターネット上で対戦出来てしまうので、地域性は関係ないといえば関係ないんですよ。ただ、そこに地域性をもたせることで、おらが村のスポーツみたいなかたちで盛りあがっていくことは、近い将来創造できると思っています。最初、地元選手だけでチームを組むのは少し難しいかもしれないけれども、そのうち地元ゆかりの選手が増えてくれば、身近に感じてくれるかたが増えると思っています。eスポーツの専門学校もできていますし、eスポーツをプレイできる場所も増えてきていますからね。
 
―2006年に日韓で行ったeスポーツ大会の出場選手のコメントがeスポーツ普及に向かう気持ちを後押ししたとお伺いしました。
 
:その選手たちは、「『eスポーツ』というものが、世界にはあるということを知らなかった。自分たちはゲームを楽しんでやってきて強いプレイヤーになって、大会があれば優勝していたけど、賞金や名声を得たり、称賛されることはなかった。自分たちが理想としていたものが世界にはあるんだな、自分たちもそういうふうになれれば良かったな。」とか「小学生のときにテレビゲームが上手いと、学校ではスターで、みんなに褒められ仲間ができると思ってテレビゲームを続けていたのに、やがて周りから『あいつオタクだよね』と言われるようになる」というような話をしていました。これを聞いて僕は、これはちょっとおかしいんじゃないかと思いました。
 
僕から見たら、野球やラグビーなどに打ち込んでいる人もオタクです。同じように一生懸命やっているのに一方は褒め称えられ、もう一方は後ろ指をさされるという状況を変えたいというのが、eスポーツと出会って思ったことです。テレビゲームを一生懸命やっていれば、褒め称えられる世界になってほしいなと思います。
 
次ページ>コンシューマーゲームがゲーム市場の大半を占めている日本は、見事にeスポーツシーンからとり残されてしまった
 



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