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「テレビゲームを一生懸命やっていれば、褒め称えられる世界になってほしい」国内eスポーツの第一人者・筧誠一郎氏の想い
2018年8月30日


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コンシューマーゲームがゲーム市場の大半を占めている日本は、見事にeスポーツシーンからとり残されてしまった

 
―なぜ、ゲーム大国日本がeスポーツでは世界に遅れを取っているのでしょうか?
 
:日本はコンシューマーゲーム(家庭用ゲーム)がゲーム市場においてメインの売上でした。一方、海外ではコンシューマーとPCのゲームの市場が半々くらいで、インターネット回線速度が遅い時期からでもPCゲームで遊ぶ文化がありました。次第にインターネット回線が速くなり、PCの性能も良くなるにつれて、グループを組んだ対戦競技がどんどんプレイできるようになっていき、ゲームでの集団競技に特化したゲームが開発され、その中で名作と呼ばれるようなゲームが現れて、そっちの方向にどんどん向かっていたわけです。
 
このような進展があり、海外ではeスポーツが興りはじめました。コンシューマーゲームがゲーム市場の大半を占めている日本は、そのシーンから見事に取り残されてしまったわけです。
 
昨年の頭くらいに、世界で遊ばれているeスポーツゲームの17タイトルが発表されたのですが、その中にランクインした日本のタイトルは「大乱闘スマッシュブラザーズ」だけ。残り16種はすべて海外のタイトルでした。「League of legends」(Riot Games)という人気タイトルのプレイヤーは全世界で1億人もいます。最近になってようやく、日本の企業が「eスポーツやらなきゃ」と動きだしたばかりです。世界との遅れを取り返していこうとしているのがいまの状況ですよね。
 
―隣国の中国や韓国などはeスポーツが進んでいます。それらの国策として後押ししたことも関係あるのでしょうか?
 
:韓国はIT立国を目指さなければいけなかったということもあると思います。ほかの国々よりも非常に早い時期からITに対しての理解があったのと、同時期にアジア通貨危機をはじめとした経済危機が重なり、失業者が増え、若者がブラブラしていてやることがないから、安いネットカフェに行ってPCゲームを楽しんでいました。この若者層がeスポーツシーンに夢を託して韓国はeスポーツで先行したわけです。
 
韓国空軍にeスポーツの選手たちが入隊したとき、彼らの腕が落ちないように、空軍の中に「エアフォース」というチームを作って選手をそこに集めたりもしたんですよ。
 
―周辺産業の後押しも産業育成には必要不可欠ですよね。それらの国々はどのように普及を後押ししたのでしょうか?
 
:中国のアリババをはじめ、メインコンテンツとしてeスポーツを考えて、eスポーツの普及にむけた都市開発を活発化させています。eスポーツ専用スタジアムを作ってそこに練習施設などを併設した、いわばボールパークのeスポーツ版を造ろうとしています。アリババの子会社であるアリスポーツが、スポーツコンテンツの一つとしてeスポーツを強力に配信しているように、関連産業も盛りあがっています。配信事業が盛んになると広告事業やほかの産業もそれを取り込もうとする動きを引き起こします。まさに一つの産業になっていて、雇用も生み出しています。
 
実際、アメリカではNBAのヒューストンロケッツのゼネラルマネージャーが「eスポーツは世界最大のスポーツになると思う」と公式に発言した事もあるほどです。
 
―eスポーツを教育面で支えている国はありますか?
 
:アメリカではeスポーツ選手への奨学金制度が進んでいます。学校教育の一環として組み入れているのは、アメリカをはじめ中国、韓国などです。産業として大きくなっていくところに人材を輩出するという目的のために、eスポーツと学校教育とが早くに結びつきました。
 
中国の国家体育総局(日本で言う文科省相当)は、2003年にeスポーツを正式な体育種目と決定していますからね。ノルウェーやスウェーデンでは既に高校の授業にeスポーツが取り入れられたりしていますし、アメリカでも今年から15の州の高校で始まります。
 
―日本のトップゲーマーはどのようにして育ってきたのでしょうか?
 
:PCが中心のeスポーツではネット上で見知らぬ誰かと対戦するので、手加減しないんですよね。かってのコンシューマーゲームは主に家庭内で行われるので対戦型ゲームを真剣にやるというより、ワイワイ言いながら楽しんで遊ぶものでした。
 
それが唯一無かったゲームセンターは、まさに修羅場だったんです。小学生が大人に打ちのめされる場でした。負かされた小学生はというと、自分を負かしたプレイヤーをいつか超えてやる!と思うわけですよね。日本の格闘トップゲーマーの方々の多くは皆さん共通してこのような原体験を味わって、いまに至るわけです。
 
―ゲームセンターで鍛えられたからこそ、日本人プレイヤーは格闘ゲームが強いのですね。
 
:その中から世界で尊敬される梅原大吾さんのようなプレイヤーも生まれてきた訳です。その尊敬を受けるきっかけとなったのはYouTubeなどの配信プラットフォームによって「背水の逆転劇」のような奇跡的なプレイで人が感動するような動画が世界に広まったことですね。
 
―eスポーツの競技タイトルにスマートフォンやVRのゲームが加わりつつありますね。
 
:結局はゲームタイトルがおもしろいかどうかです。eスポーツが盛りあがるにつれて、たくさんeスポーツ向けのタイトルが発売されているのですが、プレイヤーに支持されないタイトルは当然、長く残っていきません。ただ、おもしろいタイトルが観客を熱狂させえるのか、お金を払ってでも観に行きたいかどうかは、別の外的な要因もあります。
 
例えば、実況解説がすごくおもしろくて観やすいゲームか、競技者の一挙手一投足に魅了されるか、ゲームメーカーがコミュニティに向き合えるか、などです。やはりシーンがすごく盛りあがらないと、新作ゲームもeスポーツ向けだからといってヒットするわけではありません。
いまものすごく流行っているバトルロイヤル系ゲームは観ているだけでも楽しいですよね。よくあんなアイディアが出てきたものだと思います。さらに、プレイ参加障壁も非常に低い。逃げ回っているだけでもある程度勝ち残る場合さえもありえます。
 
eスポーツ分野で日本より先行していた海外のほうが、eスポーツのノウハウが蓄積されているので、おもしろいゲームを開発できるんじゃないかと思います。
 
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